
コンクリートに
タイル張り
それでも和
今回の特集に取り上げられた横内さんの住宅3軒のうち、この「帝塚山のセミコートハウス」が最も和から遠い建物にみえるかもしれない。主体構造は防火などの理由でコンクリート造だし、外壁はぐるっとタイル張りである。文化の核は具象ではないといってしまうとなんでもありだが、京都にいたからこそ熟した庭と建築への哲学と、それを現代建築に取り入れるための葛藤は、これまで見てきたように具象化されて現前しているものでもある。横内さんは、違和感を感じて葛藤しながら新旧の様式を混ぜ合わせていく過程の日本建築が好きだと言った。それは外来文化の和様化の過程でもあり、それを「和」といってよいのであれば、「帝塚山のセミコートハウス」での葛藤も、まさしく「和」の思潮に属しているといえる。
しかし、横内さん自身は目に見えるわかりやすい「和風」を避ける人だ。「和」はそっと忍ばせてある。それでも横内さんの建築を見たときに、伝統ならではのたけだけしさや、あるいは洗練を感じることがあるならば、むしろ力強い文化の身体への浸食として誇るべきことだ。





