特集2/ケーススタディ

創作活動の原点

「若王子の家」の主屋は、原三渓(はら さんけい)の大番頭を務めた茶人・古郷時侍(ふるごう ときまち)が、2軒の古い数寄屋を玄関でつなぐ形で明治中期に再生したものである。その後、哲学者の和辻哲郎、画家の岡崎桃乞(とうこつ)と住み継がれ、現在の家主は哲学者の梅原猛氏。南側にはみごとな池をもつ美しい日本庭園が広がっている。
 横内さんは東京藝術大学を卒業後、アメリカに4年間留学。前川國男建築設計事務所に勤務の後、1987年教職を得て京都へ移住し独立する。そして3年ほど後、義理の父にあたる梅原氏からこの家の増改築を依頼されることとなる。その要望は、北西の隅にある暗く寒い旧式の台所を、子と孫を合わせて10人の家族、また親しい友人がくつろげるダイニングキッチンにつくり直すというものだった。
 この小さな増改築はまさにデビュー作と呼ぶにふさわしい。京都の地に移った30代半ばの建築家が、多くのことを学んで吸収し、それを新たな創造へとつなげていくさまが鮮やかに見てとれるからだ。


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