
和とは何か
インタビュー 横内敏人 聞き手/伏見唯
横内さんの住宅から漂う「和」の風情は何か。横内敏人建築設計事務所がある「森のアトリエ」にて、じっくりとお話を聞きました。
写真/藤塚光政
聞き手/伏見唯
足し算の文化
横内流の「和」の作法
- 伏見唯 今回は「和の再構築」というテーマで、横内さんの住宅を特集します。「和」というと、障子や畳、あるいは数寄屋風の意匠などを連想することが多いと思いますが、一方でいわゆる日本の伝統的な意匠を用いていない住宅からも「和」を感じることがあります。横内さんが設計された住宅でも、日本的なディテールばかりを用いているわけではないのですが、どことなく全体に「和」の雰囲気が漂っていると感じています。具体的な意匠にだけ着目すると「和風」という言葉もありますが、もし「和」が伝統的な具象ではないとすると、いったいなんなのか。そのあたりの意識から、まずは聞かせてください。
- 横内敏人 まず「和風」という言葉は、あまり好きではないです。「風(ふう)」とつく言葉は、中身は本物ではないけれど外側だけ繕っている状態、いわば偽物を意味しているわけですから。僕が目指しているのは、少なくとも「和風」ではない。では、「和風」ではない「和」とはなんなのかということを考えると、違う価値観とか新しい文化を取り入れるときの作法なのではないかと思えてきます。 つまり「和」とは、伝統的に古いものを守っていくものだと考えがちですが、むしろ新しいものを積極的に取り入れていくのが「和」の文化なのではないかと思っています。「和」という漢字には、「日本」だけでなく、「やわらぐ」「なごむ」「まぜあわせる」などのいろいろな意味がありますが、足し算の結果も「和」といいますよね。このことに気がついてから、「和の文化」というのは「足し算の文化」だと考えるようになりました。歴史をみても、太古からの日本文化が純血を保ってきたわけではないですよね。古くは中国から大きな影響を受けて奈良や京都の街や建築ができてきましたし、近代以降はヨーロッパ、戦後はアメリカから多くのことを取り入れてきました。しかし、日本人は単に新しいものを取り入れるのではなく、一方で旧来のものを守ることにも努めてきました。そこに、日本人らしさが表れているのだと思います。






