将来の予感として、あらゆるものの境目がもっと「溶けていく」のではないかと思っている。
なんのことかというと、最新のホテルはすでにバスルームがガラス張りになったり、隔壁がなくなったりしているのだが、ホテル自体も街のなかで存在が消えつつあるといえなくもない。オフィスの上にのるようになったり、集合住宅や病院がコンバージョンされたり。そのうちスマホでルームを予約して、サウナやレストランや診療所などの隣室のホテル客室に気軽に投宿するようになるだろう。かくして用途地域制なども形骸化し、ホテルも霧散したようになるという予感があり、これを「溶けていく」と言っているのである。
そのとき、「旅のバスルーム」はどうなっているのかというと、まったくわからない。ヘンなおじいさんだけが黙々と溶けてしまった部屋の寸法を測っているかもしれない。
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- はやし・しょうじ(1928〜2011):建築家。日建設計で、チーフアーキテクトとして活躍。71年には「ポーラ五反田ビル」(71)で日本建築学会賞を受賞した。夫人は建築家の故・林雅子。
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- みやわき・まゆみ(1936〜1998):建築家。代表的な建築作品に打放しコンクリートの箱型構造と木の架構を組み合わせたボックス・シリーズがあり、79年「松川ボックス」(71・78)で日本建築学会賞を受賞した。





