アト・ザ・チャールズ・ブリッジ 
屋根裏部屋で小公女気分

 20数年前、林昌二さん(*1)がご自宅で宮脇檀さん(*2)に私をひき合わせ(おふたりとも故人)、「この人もホテルで実測をするんですよ」と付け加えた。宮脇さんは「ふぅーん」と言って私の顔を見たが、あの「ふぅーん」はなんだったのだろうか。
 何年かして『TOTO通信』に連載されることになった。「縦書きなんですよ」と林さんに言うと、「縦書きはうまい文章を書く人のものです」と言われた。それからずいぶんたつ。
 私はホテルのメジャリングを30年も続けている。はじめは設計のための資料づくりだったのだが、今や儀式みたいなもの。測るときに『TOTO通信』をやや意識するようになってしまったが……。関連資料も捨てないから、今やファイルブックが山のようにある。
 実測する対象はできるだけ一番数の多い客室タイプにしている。デラックスなスイートルームもいいのだが、新しいホテルなどでは、検討を重ねたレギュラーなルームがよくできていることを知っているからだ。それから安ホテルや小さな部屋。これは知恵をしぼっていてたいへん興味深い。改装した古いホテルもいい。何かある。測るのに値しないような部屋でも、測っていると発見がある。

*1
はやし・しょうじ(1928〜2011):建築家。日建設計で、チーフアーキテクトとして活躍。71年には「ポーラ五反田ビル」(71)で日本建築学会賞を受賞した。夫人は建築家の故・林雅子。
*2
みやわき・まゆみ(1936〜1998):建築家。代表的な建築作品に打放しコンクリートの箱型構造と木の架構を組み合わせたボックス・シリーズがあり、79年「松川ボックス」(71・78)で日本建築学会賞を受賞した。


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