
「塔の家」は生きる神話である。
1966年に建てられて半世紀近く、神話と化したのはいつからなのだろう。いやたぶん、生まれながらにして神話的存在だったにちがいない。
建設の経緯、建築の構成、空間、住み手、住まい方、どれをとってもミステリアスなところはひとつもない。最初からすべてが明瞭に開示されている。何かが隠されていたり、潜んでいたりはしない。建てられてから40年をはるかに超えている。それでもなお「塔の家」は、建築の関係者ばかりでなく広く一般の人々にとっても、驚き、あこがれ、畏敬、探求の対象でありつづけることをやめない。時代を超えて、数多の言説が捧げられ、無数の参照がなされている。神話化は加速度的に進行して今に至っているのである。





