——今回の特集では、今でも強い影響をもつ1960年代から70年代の住宅作品を、当時の時代の意味とともにもう一度とらえ直したいと考えています。60年代や70年代の住宅は、建築的発見や発明の原点というか、今に至る建築の流れを生み出してきたと思います。それをさらに未来につなげるために、500号記念の特集でふり返りながら、住むこと、住宅をつくること、空間のもつ意味などを考えたいと思います。
まず、長谷川豪さんはこの座談会にお越しいただいたなかでは一番若く、77年生まれですが、長谷川さんの眼には60年代や70年代の住宅はどのように見えているのかをお聞かせください。
- 長谷川 豪 この時代の住宅はとても好きです。僕は学生のときに東京工業大学の塚本(由晴)研究室でした。卒業論文で建築家の住宅作品研究をしたのですが、研究資料をリストアップするために大学の図書館に数週間こもって、戦後の『新建築』(新建築社)の約50年分すべてを閲覧しました。そのときにいろいろな建築家や作品を知ったのですが、その膨大な数の住宅作品のなかでも、60年代や70年代の住宅にはとくに惹かれたのを覚えています。戦後の混乱が落ち着いたときに、日本の都市住宅の原型のようなものが一気にあふれ出てきて、ものすごい密度の高い時代だと思いました。
- 北山 恒 私は大学生のときに、60年代、70年代の住宅作品は雑誌などで見ていました。大学で建築の勉強を始めたのは70年からで、60年代後半にさかのぼって『都市住宅』(鹿島出版会)を読んだのですが、東孝光さんの特集記事「七日間のユリシーズ」、そして、その後『SD』(鹿島出版会)での山本理顕さんの「領域論」などが強く印象に残っています。学生時代は、建築雑誌で建築を勉強したようなものです。
——当時は建築家同士がけんかするかのように意見を交わしながら、さまざまな活動を展開していたように見えました。
- 北山「野武士の世代」といわれる方々ですね。