「正しい仕事」を続けるための客観的な視点

 佐藤さんの父・佐藤作彌氏が、藤島建設の前身、佐藤工務店を立ち上げたのは1959年。住居と事務所、下小屋も一緒だったという家に生まれた佐藤さんは、小さい頃から現場にも職人たちにも慣れ親しんで育った。だが、学校は建築専攻ではなく法学部に進み、卒業後は不動産関係の会社に就職。バブル期、「ジャパンマネー」を手に、世界を相手に仕事をした。2004年、現在の藤島建設を引き継いで社長に就任したが、それ以前の経験は貴重なものだったという。
「建設会社ですから建築の専門家はたくさんいる。でも、法律の専門家はいませんから、その意味では法学部に進んでよかった。就職先では、財務の仕事をやっていましたが、いろいろなお金の動きも見られて、すごく勉強になりましたね」
 ずっと藤島建設を知っているが、建築の技術者ではない。その分、客観的に建設業も建設会社も見ることができる。そんな独特の視点から、佐藤さんは複眼的に会社を見つめているのかもしれない。だから、スタッフへの敬意のように感じられたのは、多様な建て主たちと向き合う建築のプロフェッショナルたちへの敬意なのだろう。自らは経営のプロとして、「正しい仕事」をみんなができる環境をつくる。スタッフはそのなかで、建築のプロの誇りをもって仕事をしてほしい。藤島建設の活動は、佐藤さんの熱い思いと広い視野に導かれて、地域に深く根ざし、広がりつづけている。

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