特集/対談+ケーススタディ3

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最大容積の木造2階建てをつくる

根津 まず、「トシゴヤ」を建てた経緯からお話をします。僕は専門学校で教えているんですが、そこの学生から相談を受けて、じつは幼なじみの友だちが家を建てたいので、なんとか協力したいという話でした。学生は卒業を迎えるので、では、僕の事務所のスタッフとして一緒に設計をしようと。その友だちと彼のお姉さんとふたりがお施主さんでした。この姉弟は小学校の頃にご両親を亡くして、高校のときから、この近所に以前ご両親と住んでいた家があったので、そこにふたりで住んでいました。そこが傷みがひどくて住めなくなったので、かつて祖父母が暮らしていて、今は更地のこの土地に家を建てて、ふたりで生活していきたいというお話でした。そのとき、お姉さんが20代後半で、弟さんが20代半ばです。ここを建てるのに、お姉さんが高校のときから働いて、コツコツと貯めてきたお金を使いたいと。その予算は非常にきびしいものでしたが、それ以上一銭たりとも彼女に要求することは、僕にはできない。彼女たちを応援するなら、そのなかでしっかりとものをつくっていかないといけない、というのが大前提でした。そこからこのプロジェクトが始まったんですね。
 それから敷地を見に行きました。ここは商業地域なので、道路斜線はきついですが、もっと高い建物も建てられます。ただ、2階を超えると法規制がきびしくなるし、木造以外は予算に合わないので、2階建てで最大容積のものを木造でつくろうというのは決定していました。
 お施主さんのたくましい生き様というか、彼らがこういう街で生きていく姿が、建物にも感じられるようにしたいというのがスタートです。都会における建物の原形を、なんとか木造でつくりたい。そこでイメージしたのは、段ボールハウスです。最低限のものでつくっているけれども、住んでいる人の息づかいが感じられる。かつそこに、アスファルトを破って生えてくる雑草のようなたくましさがある。だから、あるがままの素材で、「骨と皮」によってつくっていこうと考えました。


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