特集/対談+ケーススタディ3

4m×4mを積み上げて 畝森泰行 ホームページ へ 根津武彦 ホームページ へ 畝森泰行 ホームページ へ

多様な天井高を螺旋階段が貫く

畝森泰行 「Small House」の敷地は10坪で、まわりはすごく建物が密集しています。空襲を免れたところだから、小さい土地や道が残されているんですね。ふつうに考えると、建物の広さを大きくとって、敷地いっぱいに建てますから、斜線制限によって、6mくらいの高さにしか建ちません。するとせいぜい3階建てだし、ひとつの階には中途半端な大きさの部屋が並ぶので、風通しもよくない。
 全然違う解答を探したときに、天空率を発見しました。道路斜線で決まる建物よりも、道路側により多く光を落とすならば、もっと高くしてよいという法規です。平面的な広さは捨て、天空率により高さを約9mまで上げました。
 4m×4mという正方形のワンフロアを単純に積層して、地下1階・地上3.5階の建物にしています。駐車場の必要もあって、ほぼ土地の中央に建てた。まわりに空地ができるので、室内だけでなく、隣接しているまわりの建物にも、光や風を届けることができます。大きい扉はその空地に向けて開いているわけです。
 お施主さんは、ジープ・チェロキーという大型の車をおもちです。その車を好きな理由は、四角くてカチッとした、最大容積をもっていて、そこを使いきっているからだそうで、その感覚にすごく共感しました。
根津武彦 鉄骨造にしたのは、天空率を使うと決めた後なんですか。
畝森 そうですね、ボリュームが先にありました。RC造は重苦しい感じがして、あの場所には直感的にそぐわないと思ったし、木造は3階建て以上は法規的にきびしい。なるべくシンプルにつくって、窮屈さを生まないことにつながればと考えましたね。
 4m×4mというのは、螺旋階段がほとんど4分の1を占めますから、かなり勇気のいる寸法なんです。原寸でいろいろとスタディしました。ただ、以前の自宅兼事務所がそのくらいの広さで、そこで「Small House」だけを考えていたので(笑)、大丈夫じゃないかと。2方向に開口があって、とても快適だったんです。
根津 各フロアの高さ、3mとか1.7mというのは、どうやって決めたんですか。
畝森 天空率で全体の高さはほぼ決まります。地階は地下扱いにする高さ、1階はエントランスに人が立ったときの高さがあるので、2階の床までの高さも必然的に決まる。2階のダイニングルームはちょっと暗くなりそうで、道路側は北を向いていて、南面は間近に建物があるものですから、3階スペアルームの高さを抑えてでも、2階の天井を高くしたかった。ですから、あの建物の中で唯一、僕の感覚的なもので決めたのは、ダイニングルームの天井高とスペアルームのギリギリの高さだったと思います。
根津 お施主さんにも固定観念があると、なかなかこの面積と高さに踏み込むのは難しかったと思いますが。
畝森 確かに、間仕切りのない、大きなワンルームですから、お施主さんも勇気が必要だったのかもしれないです。でも、そもそもあの土地を買って、あそこに家族3人で住むんだという勇気のほうが、僕のなかでは大きかった。それでもあの街に住むという気持ちを、なんとか形にできたのかなあと思います。


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