減っていく住宅需要を掘り起こす

 ニューハウス工業が現在力を入れている商品に、スケルトン・インフィル(SI)の考え方を取り入れたものがふたつある。
 そのひとつである「ブルームス(Blooms)」は、SIの木質フレーム構造(大断面集成材による純ラーメン構造)を採用。耐震性や環境配慮などとともに、間取りの自由度を売りにする。カタログにある「一般的な基礎のおよそ2倍の太さの地中梁」や「およそ3.5倍の太さの柱」などは、個人住宅の構造体としては少々過剰とも思えるが、ここにも「じつは40年前から考えていた」と言う村上さんの思いがこもる。
 村上さんの考えはこうだ。日本の家づくりシステムの最大の欠点は、家の下取り制度がないこと。若い時期に家を建て、後に手狭になって住み替えをしようとしても、家の価値がなくなっているため、結局そのままがまんして住むしかない。それなら最初に、しっかりした軀体の大きなSI住宅を建て、収入の少ない時期は賃貸利用とし、将来大きな空間が必要になったときに自分たちで使えばいい。2世帯として利用することも簡単だ。もちろん、最初から親・兄弟など複数世帯で住むこともできる。
 選択肢が広がるこうした試みは、個人の資金調達力のみに頼る従来の家づくりの発想を大きく変える。40年におよぶ村上さんの思いは、ハード、ソフト両面で環境が整ってきたことによって、ようやく商品として結実した。
 今後の日本社会を考えたとき、住宅需要は確実に減っていく。そのとき、少しでも需要を掘り起こすには、収入などの条件が揃って家を建てられるようになった人を待っているのではなく、若いうちに建てられる環境や仕組みを住宅産業側から整えていく取り組みが必要だろう。
 いち早く立ち上げたメンテナンス会社のニューハウスサービスは、本社の50年におよぶ歴史と1万棟を超える実績に合わせて仕事を増やし、着実にグループの柱に育っている。村上さんの正義感に裏打ちされた先見性は、次の5年10年に向けて、日本の家づくりシステムの変革をも含めて、住宅産業をリードしていく。

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