ソファに座っていて感じる心地よさはこの寸法から来ているにちがいない。座って半畳、寝て1畳、両手両足伸ばして2畳。そして、ひとりでいるなら4畳半、人が集まるなら三間四方の九間(ここのま)。これが日本古来の心地よい身体尺だった。日本だけでなく世界中どこも変わらない、と故・吉村順三は断言していた。
冒頭、「基本単位を並べた家」と見た目で言ったが、本当に収納を除いて4畳半という建築の基本単位の空間だったのだ。
私の知る限り、この単位を並べて生まれた住宅はない。
基本単位の寸法をベースに無駄を削ぎ落とし、インテリアはさわやかに仕上げ、加えて外もスッキリ見える、そして、この単位が並んでひとつの全体となる。
箱でないとするとなんだろう。これは結晶の姿ではあるまいか。窓の外の光景を眺めたときのスッキリした印象も、もし水晶の中から外を見ることができればそう見えるだろう。
先生は、われわれの取材のため、サーリネンの1本脚の名作家具として知られる「チューリップアームチェア」と「ペデスタルテーブル」をわざわざ購入して置いてくださった。若き日、製図台に向かう先生の背中側で、サーリネンが繰り返しモックアップに手を加えて完成させた家具だという。
世界広しといえど、これほどこの家具が似合う空間もないだろう。昼食をいただいたとき、白大理石にしょうゆを1滴こぼしてしまったが。





