特集/ケーススタディ1

光が空間の質をどう変えるか

 八島さんたちが発表した住宅を強く印象付けるものとして、多くのスケッチやドローイングが挙げられる。それらは建築の骨格を明瞭に浮かび上がらせ、奥行きの広がりを感じさせる。同時に、それがパースペクティブで描かれていることに注目しよう。神の視点ではなく、生活者の視点からつねに発想する。その場で生活する人がどのように感じるかに意識が集中されている。
 実際の空間に身を置くと、突出したり神経にさわるものがなく、くつろいだ気持ちになれる。「事務所に蓄積した標準ディテールのようなものはなく、設計のたび、必要にかられて考え出している」と八島さんたちは言う。それは同時に、素材を絞り込んで使いこなし、ディテールを磨き抜いてきた、長い蓄積に裏打ちされてのことだろう。余計な線を一つひとつ消し、適切な素材のボリュームを見せる努力は、図面からも感じ取れる。明確で力強い空間構成をとりながら、演出を押しつけられる感じがない。それらはあくまでも目にやさしい。
「きれいな光を見せたいというより、それがその空間の質をどう変えるかに興味がある」と正年さん、夕子さんは口を揃える。光がどのような生活の場を生み出すか。また、生活をどう楽しいものに変えていくか。この小さな住宅には、豊かな答えが結晶している。


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Movie 「関前の家」

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