新関　先日「PATIO」を拝見したとき、布をまとったようなあり方を求めた、という説明を受けました。そのとおりやわらかさを感じた一方で、柱や梁は衣を受けるために必要かもしれないけれど、ないほうが衣の感じが出たのかもしれないとも感じました。壁に現れているブレースについても、最初はどうして現したのかがわかりませんでした。

直子　つくり方を表に現して見せると、なぜ？　とよく聞かれます。

久明　ありようをそのまま見せようということです。

直子　この外観は、外から覗かれないようにという施主の要望からきたもので、不思議でおもしろく見えることを狙ったのではありません。それをできるだけ素直な工法を用いて実現したということです。張りぼてにならないよう、成り立ちを見せて、後からでもプロセスがわかるようにつくりました。

久明　「コンストラクション」という言葉を意識するのですね。建物があるとき、その裏にあるのは「どうやってつくられたの？」ということで、そこは強く意識します。私たちが考えるオーダーも、そもそもは建設の過程でどう建てるかということから生まれてきたものですし。

新関　「PATIO」ではキーストンプレートなどに斜材や柱の役割を担わせて、それらをなくすつくり方があったのかもしれません。ただ、鉄骨がもつあり方自体を強調して、そのなかでまわりの部材を見せながらそれぞれの役割を語らせているのは、矢板さんたちの知的な手法だと感じました。

久明　ブレースをはずすのは可能でしょうが、構造を考えると面や芯からはずれて余分なコストがかかってきます。また部分的に開閉も考えていたので、外皮は構造から自由であることも必要でした。あたりまえにやっていって、どこまでできるのかという範囲で止めています。

直子　構造も、RCスラブから鉄骨への流れは見えるようにしたいと考えていました。アクロバティックなことは目指していません。

新関　構造上の力の流れも興味深かった点です。地面に力が流れていくときに、階ごとに壁の位置を移動しながら伝えていくのを見るのは不思議な経験でした。構造の合理性を純粋に追求してはいないところに、矢板さんたちの意志を感じたのです。

久明　構造合理主義ではないし、まず空間構成ありきという意味で、どこか数寄屋的な考え方をしているのでしょう。

新関　物と物の当て方を見て、そう思いました。

久明　ある建築家からは自分たちの作風について、「正対して見れば古典、斜めから見ると近代」と言われたことがあります。建物が対称形をしていても、空間は流れるように感じるという意味です。この流動性も、感性を動員しながらつくりあげるという意味で数寄屋的かもしれません。とくにディテールを考えているときは、まずは成り立ちなどを論理的に考えながら、一方で、感性でデザインを進めます。そしてまた客観的思考に立ち返り、実用的で機能的なディテールを概念化して統合させていくことになります。これは、私たちがずっともちつづけているテーマです。

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