トイレに、もてなしとしつらえの精神を

 こうして便器の汚れの原因を一つひとつつまびらかにしたうえで、さまざまな実験を重ねて開発したのが、今回の「便器きれい」の技術です。トイレをきれいにお使いいただくために、すべてをやりつくすのがわれわれの基本姿勢ですから、使用後に水道水を電解した「きれい除菌水」で自動洗浄するだけでなく、使用前にもミスト状の水道水を撒いてお客さまをお迎えすることにしました。陶器にテープを貼るとピタッと貼りつくのに対し、あらかじめ霧吹きで水を全体にかけておくとテープがくっつかないのと同じで、水の親水性というのは大きな力を発揮するんです。その力で前もって便器表面に雑菌を増やす栄養素がとどまりにくくしておくということですね。
 流れとしては、まず入室すると自動でふたが開いて「プレミスト」が始まり、きれいにしてお待ちしていましたというサインとしてLEDがボウル面を照らします。使用後は除菌水がノズルを除菌し、便器を除菌し、脱臭機能でにおいをとるという一連の動きが行われ、その間、「きれいサイン」が回転して、光がピカーンと点灯すると、次のお客さまをお迎えする準備完了というわけです。茶道のもてなしとしつらえの精神のように、製品がかいがいしく働いてお迎えの準備をしているのを見ると、トイレもこんな時代になったかと、あらためて感動しますね(笑)。
 電気代は月に1円程度しかかかりませんし、水もプレミストにお猪口(ちょ こ)1杯(20㏄)、使用後の除菌水にお猪口2杯分(40㏄)ぐらいですみ、効果はてきめんです。自宅にこの機能付きと機能なしの便器を2台付けて実験しましたが、掃除が苦手でいつも私まかせの妻はその歴然たる差を見て、新製品のすごさをほめてくれるかと思ったら、早くもう1台も新しいほうに替えてくれと言い出しました(笑)。
「便器きれい」の機能がこれほどの性能を発揮する背景については、いろいろな人からよく質問されますが、私はこれを部屋の掃除にたとえて説明しています。
 窓や机の上や床の隅など、それぞれの汚れに気がついたときに、そのつど片づけや掃除をする人が家族にひとりでもいると、家の中は不思議といつもきれいですよね。ところが、そういう人がひとりもいないと、室内は限界までちらかって、誰もが掃除しないとまずいなという気分になってから、一念発起して掃除することになると思います。
 これまでのトイレはどちらかというと「限界まで汚れたから掃除する」という存在で、そのために強力なトイレ洗剤を必要としました。それに対し、今回の「便器きれい」機能をよく見ると、プレミストで使用前に最大限きれいな状態にした便器をお使いいただき、使用後はアフターの除菌で「少しずつ片づける」ということをやっています。
 いわば、これまでのトイレになかった「トイレを一番きれいに使える方法を便器自身が自動でやっている」――そんな製品です。
 ここでひとつ付け加えておきたいのは、これまでTOTOはセフィオンテクト(汚れにくい陶器表面処理)やフチなし便器など、便器を最大限きれいにするために、あらゆる努力を積み重ねてきたということです。これらのベースがあって初めて、「トイレを一番きれいに使える方法を便器が自動で行う」という機能が花開いたわけです。つまり、「便器きれい」は、多年にわたる努力の末に実った果実のような存在ですね。

>> 「ウォシュレット アプリコット」ホームページを見る
>> 「ネオレスト ハイブリッドシリーズ」ホームページを見る

  • 前へ
  • 3/4
  • →

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら