
球、立方体、直方体、円筒、円錐、正四角錐。そうした幾何学立体は、彫刻家、画家に限らず、形あるものを生み出そうとするすべての者の理想にちがいなく、基本の形態としてながく崇められてきた。
けれども現実に戻ってみると、地上の建築の場合には、そうした基本の形態がそのまま有効であることはめったにない。重力をはじめ、風や日射の強度や方向、土地の形状、地表や地盤の状態、周囲の環境などが影響する。物理的な力のほかにも、法律上の制約、使い勝手、周辺居住者との関係など多種多様な力が作用する。それらの力を受けて基本の立体は振動し、歪む。たわみ、ねじれ、反転し、ずれ、ふくらみ、へこみ、崩れる。
立体に作用する複合的な力を読み解き、それを受け止めてなんらかの安定した状態に導き、かつ快適な空間をつくり出す。それこそが建築家の主要な任務なのだろう。




