地域に生きる会社 75

暮らしながら、健康になる家

今、住宅会社の動きから目が離せない。活動領域はさまざまだが、それぞれの土地柄、会社の性格、そして会社をリードする人物の性格、マーケティング戦略……。これは、その個性的な活動で地域に生きる会社のドキュメント。

アイレストホーム
代表取締役会長

旦 康次郎さん

取材・文/市川幹朗
写真/山下恒徳

  • 1階LDK。中央に2本の杉の親父柱。柱のそばに立つ、会長の旦康次郎さん。

 アイレストホームの会長を務める旦(だん)康次郎さんが住宅業界に入ったのは、20代半ばのこと。
「これからはもっともっと住宅が必要とされるが、全国民の家を日本の木でつくったら、国中の山が丸裸になってしまう。これからは工業化住宅だよという知り合いの言葉にだまされて(笑)」自動車会社から転職。当時、まだ創業数年だった工業化住宅のハウスメーカーの営業マンとなった。時代は高度成長期。たちまち頭角を現した旦さんは、やがて中四国を統括するまで出世の階段をのぼることになる。

  • アイレストホーム

  • 1階和室。

  • 中2階に設けられたライブラリー。1階から2階に空気が通り抜ける設計。

直感的に化学物質の危険性を察知した

 しかし順調に販売実績を積み上げながらも、旦さんには気がかりなことがあった。それは担当1棟目の引き渡しの際に感じた家のなかのにおい。幼い頃を岡山の大自然のなかで過ごした旦さんには、直感的に健康によいものとは思えなかったのだという。そうした懸念を払しょくするため、責任のある立場になってからは使用する建材などにも気を配るが、大企業に成長した会社のなかで、できることには限界がある。そう気づいた旦さんは47歳のときに25年間勤めた会社を退社。1990年にアイレストホームを立ち上げた。

化学物質を無害化する建材との出会い

 アイレストホームの仕事の中心は戸建て注文住宅。創業後数年、不動産事業を手がけていた強みを生かして、土地を入手したうえでの戸建て分譲、マンション分譲なども行っている。そして、いずれの仕事でも共通してアイレストホームの大きな特徴となっているのが「健康住宅」というキーワードだ。長年、旦さんがこだわりつづけてきた人体に害を与えない家づくりを追い求めたものである。
「ヨーロッパではもう10年以上も前から3万種類の化学物質を規制しているのに、日本ではいまだにたった2種類の規制しかない。人が摂取する物質は約83%が空気中からといわれていますから、日常を過ごす家の空気が化学物質だらけでいいはずがありません」
 90年代、いわゆるシックハウスが問題となり、2003年になってシックハウス対策のために建築基準法が改正された。現在も、この基準に沿って建築すればシックハウス対策をしたことになるのだが、旦さんはそれだけではまったく不十分だと言いきる。そんな旦さんが出会ったのが、カイケンコーポレーションが扱う「幻の漆喰」「音響熟成木材」「竹炭入り清活畳」の3点セット。いずれも健康自然建材と銘うつが、なかでも「幻の漆喰」は光熱触媒作用によって半永久的に空気中の化学物質を吸着・分解し、無害化する特性をもつという。これらを全面的に組み込むことで健康住宅「エアリード」をブランド化する。

  • 2階主寝室。奥に畳コーナー。床や建具には焼杉を使用。

  • 1階浴室。ハーフバスルームで、壁一面を杉材にした。

心地よい空気環境がリフォームでも人気に

 カイケンコーポレーションは、全国の工務店と取引があり、「幻の漆喰」などもエアリードの専売ではない。だが、アイレストホームが他社と異なるのは、その効果を積極的に自分たちでも実証している点にある。たとえば、国が推奨するF☆☆☆☆建材でつくった部屋と、エアリードの部屋を比較して、エアリードで15分ほど過ごしただけで人の体温が上がることを示す。体温が免疫力などに影響することは広く知られており、エアリード内で過ごすだけで免疫力もアップすることを謳う。
 依頼の状況を聞くと、戸建て住宅の顧客はとくに健康にこだわる人たちばかりではないという。ただ、モデルハウスを訪れて「なんとなくこの雰囲気が気に入ってもらえる」というのは、科学的な裏付けを待つまでもなく、心落ち着く空気感や凹凸のある浮造りの床材の感触など、いわゆる五感が刺激されて高評価につながっているのはまちがいない。これらが注目されて、保育園や幼稚園の改修、あるいはマンションリフォームの依頼も少しずつ増えており、今後の大きな可能性を感じさせてくれる。
 戦時中の空襲を逃れて岡山の山村に疎開した、正義感と腕っぷしの強かった少年も、今年喜寿を迎える。5年ほど前に社長の席は息子の壮之助さんに譲ったが、自らが立ち上げたアイレストホーム代表として、まだまだ会社をけん引する意欲は衰えていない。

アイレストホーム㈱
概要
本社所在地 広島県広島市中区中町9-9
電話 082-543-2111
代表取締役会長 旦 康次郎
会社設立 1990年
従業員数 38名
事業内容 注文建築設計・施工/分譲住宅・
不動産の販売および仲介/
健康住宅の研究・開発/
宅地開発/分譲マンション開発/賃貸業
売上高 20億1,900万円(2017年6月期)
TOTO使用機器
浴室 ハーフバスルーム
Profile
旦 康次郎

Dan Yasujiro

だん・やすじろう/1941年兵庫県生まれ。63年に岡山セキスイハウスに入社。66年より積水ハウス。岡山・倉敷営業所長、広島営業所長、中四国統括営業部長を歴任。90年にアイレストホームを設立。シックハウスの経験から、化学物質を使わない自然素材の家の必要性を感じ、健康住宅「エアリード」シリーズなどを開発している。

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