
町家の
インテリジェンスを継ぐ
作品/「ロジまちや」
設計/塚本由晴+貝島桃代
間口が狭く奥行きの深い敷地に建てられてきた町家。江戸時代に本格的に成立した住宅形式だが、そこには今なお引き継ぐべきインテリジェンスが含まれている。アトリエ・ワンが、そのインテリジェンスを読み解き、町家の再解釈を行っている。
取材・文/伏見唯
写真/藤塚光政
はたして町家は、もう過去の遺産なのだろうか。
確かに町家の起源は古く、戦国から江戸時代に城下町への定住が進んだため、いわば近世の都市住宅として成立したものである。当時の都市も人口密度が高く、間口の広さに応じて税金がかけられていたこともあり、間口が狭く奥行きのある、いわゆる「うなぎの寝床」に町家は建てられた。しかも都市での生業として住人が商売をする場合が多く、狭いなかで一部を店舗としても開いている住宅だった。
建築史家の谷直樹さんは、町家をひとつの狭小住宅ととらえ、現代住宅にも負けないほど、都市の狭小地に住まう知恵が詰まっていたと述べ、「(町家は)一周遅れのトップランナーとして再評価されてもよいのではないか」(『新建築住宅特集』2009年12月号、新建築社)と主張していた。古きよき過去の遺産とみなすばかりでなく、今なお生きた知恵が潜んでいるととらえるべきではないだろうか。思えば、町家は「町」の「家」。江戸時代に限ったものであるはずがない。
数々の都市住宅を設計してきたアトリエ・ワンが、まさにその町家の再解釈に取り組みつづけている。「ロジまちや」は6棟目の実践である。
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