特集5/ケーススタディ

法規の判断をめぐって

 2013年9月、国土交通省は、異常に小さな居室を詰め込んだ、いわゆる「脱法シェアハウス」への対策として、シェアハウスは建築基準法上の「寄宿舎」に該当するという技術的助言を発表した。その判断によれば、多くのシェアハウスは違反となる。最後に成瀬さんの意見を聞いてみよう。
「新築なら『寄宿舎』でいいと思いますが、リノベーションの場合、きちんと運営され、入居者同士のコミュニケーションがとれているシェアハウスなら、一般の住宅と安全性に差があるとは考えられません。悪質な業者を取り締まるための苦渋の判断だったとは思いますが、もっと精度の高いルールの設定はないのか、考えていきたいところです」
「今回はシェアハウスについてでしたが、ほかへの影響も心配しています。たとえば今、団塊の世代がリタイアする時期になって、彼らの住宅ストックをどう地域に開いていくかというさまざまなアイデアが出てきています。若者に上階に住んでもらうとか、一部をコミュニティカフェにするとか。こういった新しい利用方法を考えていく場合、前例がないので建築関連の法規と戦うこともしばしばです。ルールは必要ですが、新しい取り組みをどんどん起こしていくためには、安全性は確保しつつも、ある程度自由度をもたせ、対話しながらつくっていくという姿勢が必要だと思います」
 当日はうかがうと間もなく、2.5階の一室に入居する方の引っ越しが始まった。いささか慌ただしく場所を移動しながら撮影と取材を行ったが、帰るときにはまた穏やかな空気が戻っていた。このゆったりした共用空間は、多様なアクティビティをこともなげに受けとめているように見える。しかしそれは、「LT城西」にかかわる多くの人たちによる、繊細なすりあわせを経てもたらされたものなのだ。


>> 「LT城西」の平面図を見る
>> 「LT城西」のa-a’断面図を見る

  • 前へ
  • 5/5
  • Drawing
  • Profile
  • Data
Movie 「LT城西」

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら