
左官
岩井宏治
手間がかかっても高い質を
丁寧さと速さが必要
岩井左官工業所は一族を中心にした左官職人集団です。僕はいろいろな仕事を経験した後、34歳のときから父のもとで働きはじめて、今年で11年目になります。一応4代目ですが、一番下っ端で、まだまだ修業中です。
横内さんが設計した家は今まで何軒も担当しましたが、初めは正直難しいと感じました。いろいろこだわってはるところがあるので。でも、ずっと見ていくと、一貫性、統一性があってすばらしいなあと思います。
外壁については仕上げは別の材料が多いのでおもに下地塗りですが、内装は壁も天井も同じ珪藻土入りの仕上げ塗材を使うことが多いので、左官の出番はけっこうあります。とくに天井は長時間ずっと「イナバウワー」の体勢ですから(笑)、つらいですね。でも、やはり上塗りはちょっと熱も入ります。
後は三和土や玉砂利の洗い出しなど、土間の仕上げも左官の仕事です。横内さん設計の家によくみられる、鉄平石の目地を広めにとって洗い出しにする土間の場合、今は細分化が進んでいるので、鉄平石はタイル工事業者が張り、洗い出しはうちがやります。手間はかかりますが、洗い出しや三和土といった昔ながらの材料と仕上げの土間は、見た目の美しさだけでなく、水はけのよさや耐久性があり、時間とともに味わいが出てくるので、喜んでいただければ苦労した甲斐があります。
現在、うちには親父や僕を含め、全部で7人の左官がいますが、じつは左官は9割がた、せっかちです(笑)。材料がなまものですから、キリがいいところまで一気に仕上げないと乾いて塗り継ぎの線が出てしまうんで、どうしてもせっかちになるんですよ。
横内先生の現場は大きな壁が多いので、丁寧さと速さが同時に求められます。ひとりで塗りきれないときは、上・中・下段を3人でいっせいに塗っていくこともあります。職人は一人ひとり個性派揃いなので、どうしても塗り方のパターンなどによって少々の違いは出てしまいますが、塗り継ぎが出ないように気をつけています。





