昔は現場には大工さんしかおれへんかったけど、今はだいたいの工務店に現場監督がいて、各現場を担当することが多く、うちには現在、女性2名を含めて8名の現場監督がいます。
僕は最初は設計がやりたくて、現場を勉強するつもりで今の会社に入ったんですが、やってみたらおもしろくて、結局ずっと現場監督をしています。大工や左官と違って、更地の状態から完成まで家一軒が建つプロセスをずうっと見られるのは監督だけなんですよ。
それと、職人と設計者の調整役みたいなところもありますね。若い現場監督が熟練の職人を束ねるのは大変ではないかとよく言われますが、うちは棟梁の横田さんをはじめ、専属大工や諸職のみなさんが若い子を「育てたろう」「教えたろう」という気持ちが強いので、なんでも聞けば教えてくれます。
横内さんはけっこう職人さんの話をよく聞いて、意見を反映してくれはるんで、やりやすいです。本来は監督である僕があいだに入るべきなんでしょうけど、図面の細かいディテールなどは直接話したほうがわかりやすいし、横内先生はこちらを緊張させずに一緒に話ができる人なんで、職人も同席して打ち合わせできる場を積極的に設けるようにしています。
初現場は、まだ23~24歳の頃に担当した「たて庭の家」(06)です。設計事務所の仕事が初めてで、かつ横内敏人建築設計事務所の1軒目だったんですが、あんな手描きの詳細図を何枚も描いたのを目にしたことがなかったんで、最初はそれだけで気負けした感じでした(笑)。でも、工事中は読み取れなかったことが、完成した家を見ると「あ、なるほど、こんなんなるんやなあ」と僕も職人さんもわかり、勉強になりました。それは今でも毎回同じで、だから横内さんの仕事は楽しいです。
横内先生は現場に庭木が入り出すと落ち着かなくなり、打ち合わせをしていてもほとんど庭のほうを見てはります。日によっては、ちょっとごめんと席をはずして、庭師さんと一緒に土を耕したりしてますね(笑)。






