『TOTO通信』が通巻500号に達しました。これもひとえにみなさま方の力強いご支援によるものと心より感謝申し上げます。
ふり返れば、1953年創刊のTOTO初の社外報『東陶ニュース』を母体に、1956年に創刊(当時は『東陶通信』)、4ページ建てで始まった当誌は、その後さまざまに発行サイクル、形態、編集方針を変化させながら継続し、時代の建築の変化を追いながら、建築に携わるみなさまのお手伝いをしたいという思いで発行を重ねてまいりました。
TOTOグループは一丸となって、生活価値を創造する活動を通じて、商品だけにとどまらず、お客さまの期待以上の満足を追求し、お客さま・社会から必要とされる企業でありつづけるべく、努力してまいります。
『TOTO通信』は、これからもよりよい誌面づくりに努めてまいりますので、変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
500号記念の特集タイトルは、「忘れられた冒険」です。
ずいぶんなタイトルと思われる方もいらっしゃるかもしれません。考えてみると100年以上前のすぐれた建築は学校でも教えています。また、書籍その他で十分に学ぶことができるようになっています。
一方、直近の、いわば今現在の新鮮な建築的試みは、建築雑誌のみならず、日々さまざまなメディア上で紹介され、知ることができる時代です。
とはいえ、わずか40年、50年前の建築の試みやその情報はどこに行けば手に入るのでしょうか。その時代の作品を、古い手元の資料で訪ね歩いてみました。
未曾有の発展を遂げる日本の建築界の起点のひとつがここにありはしないか、という思いがありました。1960年代、70年代に、今の日本の建築界の繁栄のもとがあるといってもいいのではということです。
そのエネルギー、当時の新たな挑戦を、500号を記念してふり返ってみました。現代の建築が継続する時間の流れのなかにあるとしたら、日本の名作を見直すのも意義あることではないか。未来のために今一度過去をふり返ってみようという企画です。
もちろん1960年代、70年代のすぐれた建築的試みをすべて掲載するわけにはいきません。住宅11軒です。名作でありながら孤高の作品は避けました。あまりに名作で誰もが知りつくしている作品も割愛しました。
記憶の蔵にしまい込まないで、見直して未来へつなげていただけたらという願いを込めて。
表紙写真/「KIH」の室内
写真/鈴木 悠