TOTO通信2021年夏号
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 前の大戦で日本が無条件降伏を受諾した「ポツダム宣言」は、ベルリンから30㎞ほどのポツダム市ツェツィリエンホーフ宮殿で行われた会談で採択された。 市内にはもうひとつ夏の離宮としてプロイセン王国時代に建てられたロココ建築のサンスーシという宮殿もあり、ここは宮殿前の丘と一体化した段状テラスにブドウの木や格子付きの窓が並んでなかなか美しい。 ベルリンの中心部にはその街の名を冠したポツダム門があった。1989年には広場を分断していた「ベルリンの壁」が崩壊し、ヘルムート・ヤーン(*1)設計の「ソニーセンター」(2004)などができた。近くにはハンス・シャロウン(*2)設計の「ベルリン・フィルハーモニー」(1963)も健在。あの独特なワインヤード型のコンサートホールではベルリン・フィルの演奏を楽しむことができる。 その近く、ポツダム広場西の絵画館。元王宮のコレクションという収蔵品には恐れ入った。クラーナハ、デューラー、カラバッジオ、レンブラント、フェルメールなど巨匠の名作がひしめいていて見応えがある。 この中級ホテルはそのポツダム広場から至近。2015年の開業。 グリムスとはなんのことかと思っていたら、グリム兄弟(*3)のことでありました。なるほどレターヘッドも「カエルの王様」。 子ども向きのホテルではないのだが、全館グリム童話のキャラクターで埋め尽くされている。客室階も各階でお話のテーマを変えていて、廊下と部屋の壁紙、廊下の横長照明、洋服掛けのフックなどは童話のモチーフ。なるほどさりげなくてなかなかかわいい。フロアを間違えにくいかもしれない。 私のルームなどは「赤ずきん」だから、ベッドのすぐ脇のビニルクロスにおばあさんに扮した狼が寝ているイラストというか模様があって、それが枕の半分もある大きさなので、ぼんやりと目を覚ますとドキリとする。「この狼、お腹に入っているのはおばあさんかな、それとも赤ずきんちゃんとふたりかな」などと思わず見てしまう。しかしこれはいかがなものか。日本のホテルならゼッタイNGだ。「ヘンゼルとグレーテル」のフロアもある。グリム童話にはヒトを食べるとか、復讐するとかどこか残酷なところがあるから、ホテル・インテリアのデザイン・モチーフにするには難しいと思う。そう思いません? バスルーム。洗面台まわりの設計をするとティッシュペーパー、拡大鏡、ドライヤーなどが雑然として整理できないものだが、ここではアルミのボックスをミラーに取り付けてそれらをうまくまとめてある。カウンターは有効利用され、自分で持ち込んだ化粧品も並べられる。タオルは下段にたたんである。さほど広くないバスルームのカウンタ*1 ヘルムート・ヤーン(1940〜2021):ドイツ生まれのアメリカ人建築家。「イリノイ州センター」(85)、「東京駅八重洲口グランルーフ」(2013)などを設計。*2 ハンス・シャロウン(1893〜1972):ドイツの建築家。作品に「ベルリン・フィルハーモニー」(63)、「シュミンケ邸」(33)など。戦時中もドイツにとどまった。*3 グリム兄弟:19世紀にドイツで活躍した言語学者・文献学者・民話収集家・文学者の兄弟。各地で収集した童話、民話を編集した。代表的なものに「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」「カエルの王様」「灰かぶり(シンデレラ)」などがある。ーではこのアイデアいいかもしれない。 ベルリンという街を歩きまわると、忘れられたような建物に出くわすこともある。my castle「伯林(ベルリン)」と市内の古い建物。綴りたくなる。きのこのフックに掛けられたドンディス・カード。うら・かずや/建築家・インテリアデザイナー。1947年北海道生まれ。70年東京藝術大学美術学部工芸科卒業。72年同大学大学院修士課程修了。同年日建設計入社。99〜2012年日建スペースデザイン代表取締役。現在、浦一也デザイン研究室主宰。著書に『旅はゲストルーム』(東京書籍・光文社)、『測って描く旅』(彰国社)、『旅はゲストルームⅡ』(光文社)がある。童話をデザインのモチーフに!40文・スケッチグリムス・ポツダム・プラッツドイツ・ベルリン旅のバスルーム浦 一也第114回

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