特集

2021年 夏号 個室の復権‑ 提案01 ‑作品名「身の丈の部屋」

建築家/常山未央+能作文徳


現代版の「晴耕雨読」

個室という言葉は、物理的・精神的に「閉じる」ニュアンスを帯びている。
常山さん、能作さんは、私たちが天候に大きく影響を受け、自然サイクルの一部として生かされている事実を受けとめたうえで、「身の丈」の(=自ら閉じて責任を負える)暮らしを再解釈した。


身のまわりにあるものや手軽に手に入れられるもの、
廃材を利用して自分でつくってみよう。

材料はホームセンターや材木屋などで容易に手に入るものばかり。廃材も再利用し、「食の副産物」も無駄にしない。

小さなたたずまいの大きな部屋

 身の丈の部屋をつくってみよう。
 現代の人々の暮らしはエネルギーもマテリアルも使いすぎている。材料は身のまわりにあるものや、手軽に手に入るもの、解体現場で捨てられたものを利用する。近くの農家で出てくる籾殻や藁をもらってくる。ひとりでも持ち運びが容易で、特別な道具や技術がなくても加工できる工法でつくれるようにする。時間はかかるけれども、一日の過ごし方を想像しながらどんな設えがよいか思案するのは楽しい。身の丈サイズで、自分でつくれて、エコロジカルフットプリントの小さい建築だ。

仕事や食事から、お茶や休憩に仮眠まで。さまざまな活動ができるよう、ミニマムながら十分に家具が設えられている。

太陽光発電パネルをのせた屋根の下には、籾殻で断熱された八角形の部屋が。

 土壌に負担をかけないようにコンクリート基礎ではなく、焼いた松杭の上に木造の架構をのせる。表面積が小さく気積が大きい球体から発想した八角形の入母屋の形の架構である。仕事をするにはパソコンやスマホが必要だ。最低限のエネルギーを自給できるように太陽光発電パネルを南側の屋根面にのせる。ノートパソコンを広げて外を眺めて仕事ができる。曇りや雨の日は小さなバッテリーがあれば事足りる。雨が続いて電力がなくなったら仕事はおしまい。太陽に合わせて暮らせばいい。南側には反射板で太陽光を集めて熱を発生させるソーラークッカーがある。お日さまの力で沸かしたコーヒーでの一服は格別だ。パソコン作業に疲れたら横になって頭を休めよう。寝転ぶと丸窓からは外の景色が見える。北側のコンポストトイレには天窓があり、口から入った食べ物がお尻の穴から糞便となって出て土に戻っていく。用を足すときに空と身体と地球が一体に感じられるのだ。リモート会議の合間に梯子で庭に降りてみる。屋根から集められた雨水を畑の野菜にあげて気分転換。隣のおばさんが育ち具合を尋ねてくる。トイレの肥やしのはたらきがすこぶるよい。寒いのは嫌いなので部屋はきちんと断熱したい。毎日食べる米の副産物である籾殻を燻して断熱材に使えば、無料でゴミも減らせて一石二鳥だ。自分でつくったから修理や更新もなんてことはない。
 この部屋は身の丈サイズだが、太陽や地球を感じられる、大きな部屋なのだ。

平面図

10㎡未満という床面積だが、八角形の形を生かして東西南北に各機能がうまく納められている。

AA’断面図

風や光、熱といった、一般的に扱う環境要素にとどまることなく、住み手までも含めたエネルギー循環が見えるのがおもしろい。

BB’断面図
  • 能作文徳氏の画像

    能作文徳Nosaku Fuminori

    のうさく・ふみのり/1982年富山県生まれ。2005年東京工業大学工学部建築学科卒業。07年同大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。10年能作文徳建築設計事務所設立。同大学院助教を経て、18年東京電機大学准教授。博士(工学)。おもな作品=「高岡のゲストハウス」(16、能作淳平との共作)、「ピアノ室のある長屋」(18)、「西大井のあな」(工事進行中、常山未央との共作)。

  • 常山未央氏の画像

    常山未央Tsuneyama Mio

    つねやま・みお/1983年神奈川県生まれ。2005年東京理科大学工学部第二部建築学科卒業。05年ブノート・ザパタアーキテクツ(スイス)。06年スイス政府給費留学生。08年スイス連邦工科大学ローザンヌ校建築学科修士課程修了。08年HHFアーキテクツ(スイス)勤務。12年mnm設立。東京理科大学助教を経て、20〜21年同校特別講師。おもな作品=「不動前ハウス」(13)、「西大井のあな」(工事進行中、能作文徳との共作)。

写真/鈴木淳平(常山未央、能作文徳のポートレイト)