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空撮した「森山邸」。周囲の街並みとヴォリュームや路地が連続している。 写真/藤塚光政

2021年 新春号 藤塚光政の写真術を読む‑ 住宅写真10選 ‑08.「森山邸」

空から撮るとアイレベルではわからないものを
一枚に収めることができる

「僕の経験則だけど、11月3日は不思議と毎年晴れるんだよ。だから、毎年空撮をすることにしているの。この年は、ちょうどその前から『森山邸』の撮影依頼が来ていたから、これは絶対に空撮がいいだろうな、ってピンときた。それで調布の飛行場から飛んで、2、3カット撮影したんだ」
 これは、雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス)のために撮影された一枚だ。「森山邸」の写真といえば、ほとんどの人は、白い箱型の建物群が林立するのを、路上からアイレベルでとらえた写真を思い出すことだろう。しかし、藤塚はあえて空撮を選択した。
 上空からの俯瞰によって、内部の関係性がはっきりわかる。アイレベルでは一度にとらえられない、10個のホワイトキューブそれぞれのヴォリューム感や、それらが敷地内につくり出す路地が、この一枚にすべて収められている。
 また同じ一枚の写真で、「森山邸」と街とのつながりも明らかにしている。敷地周辺は、縦横グリッド状に道が走り、各住宅はバラバラながらも秩序だって並ぶ。建物群の配置や路地は、そうした周辺環境と接続し、街の一部として溶け込むよう計画されていたのだ。
 こちらの写真も、インタビュー本文(インタビュー「僕の見方、そして撮り方」)の「シルバーハット」「中野本町の家」の写真と並ぶ、藤塚の住宅空撮という手法が非常に生きた例だろう。

俯瞰した夕景。部屋が見え、各ヴォリュームの関係性がわかる。 写真/藤塚光政
  • 藤塚光政氏の画像

    藤塚光政Fujitsuka Mitsumasa

    ふじつか・みつまさ/ 1939年東京・芝に生まれる。61 年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業。月刊『インテリア』を出版していた日本室内設計研究所に入社。63年菊竹清訓「出雲大社・庁の舎」の撮影で、写真家デビュー。65年フリーランスとなる。73年有限会社ZOOMを白鳥美雄と設立。87年Helico有限会社設立。同年日本インテリアデザイナー協会賞を受賞。2007年川辺明伸を共同主宰者とする。18年2017年度毎日デザイン賞特別賞を受賞。