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室内の光が壁を通して外にもれやわらかい光が街に灯っている。 写真/藤塚光政

2021年 新春号 藤塚光政の写真術を読む‑ 住宅写真10選 ‑06.「Plastic House」

昼夜で表情を変えるプラスチックの光壁を
撮りたくて、内と外の両方で構えた

 隈研吾は、藤塚が長年にわたって作品を撮影している建築家のひとり。藤塚責任編集の『建築リフル』シリーズでは、隈に文章を依頼した。それが、今も続く付き合いが深まるきっかけだった。かねてから、隈の書く文章が好きだったという。
 多くの隈作品を撮影しているが、そのなかで選んだのが「Plastic House」。2枚のFRP(繊維強化プラスチック)で光を透過する断熱材を挟んだ外壁をつくり、階段やその手すり、バルコニーにもFRPが採用されている。文字通り、プラスチックでできた住宅だ。
「昔から、プラスチックはどちらかといえば肯定的な存在ではなかったし、最近はさらに見る目が厳しい。建築にとっても不可欠な素材であることは間違いないけれど、誰もがそんなに美しいものだとは思っていないよね。でも、隈さんの手にかかれば、プラスチックが本当に美しいもののように感じられたよ。FRP特有のあの緑がかった色味も、なんだか植物みたいにさえ思える」
「一日を通して撮影したんだけど、昼間は外の明るさを取り込んでぼんやりと明るいのに、それが夜は普通の家並が続くシルエットのなかでやわらかに灯っていて。まるで、そこだけ昼夜が逆転するようだった。プラスチックにもかかわらず、まるで障子を通したようなやさしい光だった。それを撮りたくて、昼は内側から、夜は外側から撮影した。見たことのない世界を示すKumagicだよね」

外光によって室内の壁全体がぼんやりと光っている。 写真/藤塚光政
  • 藤塚光政氏の画像

    藤塚光政Fujitsuka Mitsumasa

    ふじつか・みつまさ/ 1939年東京・芝に生まれる。61 年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業。月刊『インテリア』を出版していた日本室内設計研究所に入社。63年菊竹清訓「出雲大社・庁の舎」の撮影で、写真家デビュー。65年フリーランスとなる。73年有限会社ZOOMを白鳥美雄と設立。87年Helico有限会社設立。同年日本インテリアデザイナー協会賞を受賞。2007年川辺明伸を共同主宰者とする。18年2017年度毎日デザイン賞特別賞を受賞。