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東側外観。東面の壁は一面が銀色。三角形状の印象を強調している。 写真/藤塚光政

2021年 新春号 藤塚光政の写真術を読む‑ 住宅写真10選 ‑01.「焼津の住宅2」

アイコニックな銀と白の三角形を
画面に収めたかった

 さまざまな建築作品を撮影した「建築・作品と方法の追跡」(雑誌『ジャパンインテリア』の連載)のなかでも、この「焼津の住宅2」が印象深かったという。この建築を初めて見たときのことを、藤塚は「屋根だけというか、竪穴式住居のような。まるで立面が埋まったような姿にとても驚いた。三角形は造形として強いしアイコニックだから。立面の銀と白のペイントも、青空に映えていた」と振り返る。
 軽い高揚を感じながらカメラを構えたが、外観全体が入らない。当時一番使用していた20㎜のレンズだってそこそこ広角だが、それでも全体を収められなかった。結局その日は、着いて10分もたたないうちに退散。東京に戻ってすぐニッコール15㎜レンズを買いに行った。定価は18万5,000円(当時)。「とても高かったけれど今必要なんだし、レンズはその後も使うことができるから。そうじゃないと、レンズやカメラなんて買えないよ。この一回で半分元をとった、と思えなきゃ、踏ん切りがつかない」。
 そして翌日、買ったばかりのレンズを携え、再び焼津へ赴いた。しかしそれでも全景は収められない。塀に脚立を立てかけて上がり、やっと全景が入るポイントを確保した。だが、今度は手前にある桜の枝が邪魔をする。撮影は時間との勝負、迷っている暇はない。ここまでして戻ったのに……そう思った瞬間、躊躇なく枝を折って撮影したという。「無事に撮れた後、川床(編集者)に枝を渡して謝りに行ってもらったよ。今思えばヒドい話だな」。

小屋裏の室4。三角形の空間とそれを支える架構がわかる。 写真/藤塚光政
西側外観。壁は一面が白色。 写真/藤塚光政
  • 藤塚光政氏の画像

    藤塚光政Fujitsuka Mitsumasa

    ふじつか・みつまさ/ 1939年東京・芝に生まれる。61 年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業。月刊『インテリア』を出版していた日本室内設計研究所に入社。63年菊竹清訓「出雲大社・庁の舎」の撮影で、写真家デビュー。65年フリーランスとなる。73年有限会社ZOOMを白鳥美雄と設立。87年Helico有限会社設立。同年日本インテリアデザイナー協会賞を受賞。2007年川辺明伸を共同主宰者とする。18年2017年度毎日デザイン賞特別賞を受賞。