最新水まわり物語

トイレ入口。トイレのサイン下に空室状況を示す液晶パネル。縦長の液晶パネルでは水をテーマにした映像を流している。写真/TOTO

2019年 夏号日本の玄関口に最先端の
おもてなしトイレ

成田国際空港第1ターミナル experience TOTO

成田国際空港第1ターミナルの外観。写真/成田国際空港株式会社

 今年4月3日、成田国際空港第1ターミナルビル南ウイング1階に、TOTOプロデュースの最先端トイレ「experience TOTO」がオープンした。
 同空港は4年前にもTOTOとのコラボレーションにより、第2ターミナルにクライン ダイサム アーキテクツが手がけた「GALLERY TOTO」をオープンしており、日本のトイレのすばらしさを体感する場としては2例目。

空室状況を示す液晶パネル トイレ入口のパネルでブースの空室状況を確認できる。写真/TOTO
空室状況を示す液晶パネル 足跡のサイン上に並ぶと頭上のセンサーで行列具合を把握。写真/TOTO

ウォシュレットを体験してほしい

 成田国際空港の秋山桂央さんによれば、両者はターミナルが異なるだけでなく、「GALLERY TOTO」が入場制限のある出国エリアにあり、出国手続きをすませて荷物を預けた後の乗客が利用するのに対し、「experience TOTO」は誰でも入れる到着エリアにあって、受け取ったスーツケースなどを持ち込む人が多く、とりわけ初めて日本を訪れた外国人が最初に体験するトイレであることから、似ているようで違いは大きいという。TOTOの楠野裕子さんは「荷物の大きさや動線、人の分散のしかたなど、すべて違いますので、そのへんから全体のプランを考えていきました」と語る。
 訪日外国人に最新の日本のトイレ文化を体験してもらうために、今回とくに力を入れたのは、「ウォシュレット」の体験促進。楠野さんによると、ウォシュレットの存在は知っているものの、体験したことがない外国人は多く、説明が日本語でわからないという声が多いという。
 そのウォシュレットの訴求を含め、トイレの最先端技術を知ってもらうために活用したのが、IoT技術。具体的には、入口の両脇にあるトイレの空室状況を示す液晶パネル、そして各ブース内に設置したタブレットリモコンだ。
 まず外側から見ると、正面の壁に縦長の液晶パネル4枚が配置されており、4枚が一体となって、水をイメージした映像や「おしりを洗う気持ちよさ」を表現したポップなイラストアニメーションが映し出される。「あまりストレートにおしりを出して洗うことを絵にすると品位にかかわりますし(笑)、かといって抽象的すぎるとわかりにくくなるので、非常に難しかったですね」と楠野さん。

ウォシュレットのタブレットリモコン タブレットリモコンでは、機能を動画でわかりやすく説明。写真/TOTO
ウォシュレットのタブレットリモコン 5言語から選択でき、初めて利用する外国人にもやさしい。写真/TOTO

空室状況がひと目でわかるパネルを設置

 次に、入口の両脇にあるのが、それぞれ男女トイレの空室状況をリアルタイムで表示する液晶パネルだ。このパネルと、後述するブース内のタブレットリモコンは、バカン・NTT東日本・TOTOの共同企画によってつくられたもの。
 バカンはレストランの空席情報やトイレの空室状況などを配信するサービスを行うベンチャー企業で、社長の河野剛進(たかのぶ)さんは「TOTOさんとはずっと一緒に組みたかったので、うれしかったです。僕自身、トイレが混んでいて困った経験は何度もありますし、これを自分の問題としてとらえ、空いているところを自分で選び、待つかどうかも選択できることによって、日常がちょっとよくなる世界を目指してきました」と語る。
 パネルには男女トイレの簡易な平面図が描かれ、男女トイレの各ブースのドアに設置したセンサーと連動して図面上に空室か満室かを表示。空きが残りひとつになると、パネル右上の「空」のサインが「混雑」に切り替わる。さらに、通路に沿って行列ができると、通路沿いの天井に設置したセンサーが感知し、行列の長さも表示される仕組み。表示は日本語、英語、簡体字中国語、繁体字中国語、韓国語の5言語が随時切り替わる。パネルにはブースごとに異なる機能がピクトグラムで表示されていてわかりやすい。河野さんによれば、将来はスマホやパソコンと連動させ、実際にトイレまで行かずとも混雑具合がわかる仕組みもつくれるそうだ。
 奧のトイレ内部はモノトーンの落ち着いたインテリア。どのブースもスーツケースが納まるよう、通常よりかなり広い面積を確保してあり、扉も開口が広く、出入が容易な折れ戸式で、空きが一目瞭然だ。女子トイレは見通しがきくアイランド型洗面コーナーと、スタイリングコーナーを分けることで混雑緩和を図る一方、男子トイレはプライバシー確保のため、小便器のあいだに仕切りを設けるなど、TOTOが永年かけて培ってきた最先端トイレのノウハウが余すところなく生かされている。
 また、入口寄りの通路の両側には、車いす使用者優先トイレと多機能トイレを完備。性別にかかわらず使える共用トイレなので、異性による介助や性的マイノリティの方にも安心だ。男女トイレにもオストメイト配慮器具やベビーシートのあるブースを設けるなど、機能が分散されている点も、多機能トイレの混雑緩和にひと役買っている。

女子トイレ 洗面コーナーとブース。開口の広い折れ戸式扉でスーツケースを持って入りやすい。写真/TOTO
女子トイレ 洗面コーナーとスタイリングコーナー。分離して混雑を緩和。写真/TOTO
女子トイレ オストメイト配慮ブース。機能分散で多機能トイレの混雑を解消。写真/TOTO

「タブレットリモコン」で5言語に対応

 さて、最後にじっくり見学したのが、ウォシュレットの「タブレットリモコン」だ。ブースのドアを閉めると起動し、5言語から言語を選択すると「おしり」「ビデ」「音姫」「ノズルきれい」の4つのメニューが表示される。「これまで使い方がわからない外国人のお客さまが誤ってウォシュレットを作動させ、止め方がわからず、非常呼び出しボタンを押すことなどがあったので、多言語対応のタブレットリモコンによって、そうした悩みが解消されることを願っています」と秋山さん。
 開発にあたっては、試作品をTOTO本社内に設置し、社員80名ほどに使用してもらい、問題点を指摘されるたびにプログラミングを改良し、また使ってもらうという試行錯誤の繰り返しだったという。
 弱視の人にもわかりやすい表示など、ユニバーサルデザインの視点から考えるTOTOの基準は厳しく、「バカンさんにはデザインと使いやすさのせめぎあいでご苦労をかけました」と楠野さんは振り返る。「通常はもっとしっかり基準を満たすものをつくってから試すというのがTOTOさん本来のスタイルだと思いますが、今回のプロジェクトは結構ふんわりと始動し、スケジュールと折り合いをつけながら細かいところは何度も改良を加えていくというプロセスだったので、そこが難しかったです」と河野さん。目下、心配なのは、お客さまがタブレットリモコンに興味を示すあまり、各ブースの使用時間が長くなって混雑を招かないかという点だと、お三方は苦笑する。
 ただし、じつはこの試み、緒についたばかりで、タブレットリモコンは遠隔でアップデートできるため、お客さまからの声を反映して、より使いやすくなるようにシステムの改良が可能だという。また、今後はIoT技術をトイレの管理や清掃のチェックに活用していく計画もあるそうだ。「ユーザーの声を拾って進化していける、世界でも唯一のトイレなので、今後の展開に期待しています」と秋山さんはしめくくった。
 

男子トイレ 小便器コーナー。プライバシー配慮のために仕切りを設置。写真/TOTO
多機能トイレ トイレ入口脇に多機能トイレを設置。オストメイト対応。写真/TOTO
多機能トイレ 車いす使用者優先トイレ。4言語の音声案内で機能を説明。写真/TOTO
  • 秋山桂央氏の写真

    秋山桂央Akiyama Kana

    成田国際空港
    営業部門
    旅客ターミナル部
    営業管理グループ
    主席

  • 河野剛進氏の写真

    河野剛進Kawano Takanobu

    バカン
    代表取締役

  • 楠野裕子氏の画像

    楠野裕子Kusuno Yuko

    TOTO
    販売統括本部
    商品販売企画部
    商品販売
    企画グループ
    企画主査