新商品開発物語

福田祐子(左)村橋利行(右)After お風呂の床(実験装置)に墨汁を垂らし、床ワイパーによる洗浄の検証を行った。写真/山下恒徳

2019年 新春号えっ、スイッチひとつでお風呂の床がきれいに!?なんてラクなんでしょう。

システムバスルーム「sazana」床ワイパー洗浄(きれい除菌水)オプション 2019年2月発売

Before お風呂の床(実験装置)に墨汁を垂らし、床ワイパーによる洗浄の検証を行った。写真/山下恒徳

TOTO㈱ 機器水栓事業部 水栓開発第一部 アクアオート開発グループ
村橋利行
TOTO㈱ 浴室事業部 浴室開発部 浴室商品開発グループ
福田祐子

「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」で
お掃除がさらにラクに

新しいサザナは、どういう商品ですか。

福田祐子サザナは多くのお客さまにご支持いただいてきたTOTOバスルームのスタンダードモデル。カラーバリエーションが増え、節水と刺激感を両立する「コンフォートウェーブシャワー」が加わりました。さらにとことん磨いてきたお掃除のしやすさに、切り札ともいえる「きれい除菌水」を取り入れた「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」をオプションで追加したのが、今回の新商品です。

お風呂の床をきれいにするんですね。

福田「お風呂のどこの汚れが気になるか」というお客さまアンケートの結果、床まわりに関する部分が上位にランクインしたのです。床や排水口のお掃除は姿勢がつらかったり、汚れに直接触れたりします。清掃頻度を減らしたいというニーズがとても高いんですね。そこで、従来のお風呂掃除の常識を変える「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」という新機能を導入しました。

自動車のワイパーみたいですね。

村橋利行ワイパーのように左右に動きながらお風呂の床の汚れを流す装置です。黒カビの原因となる角質を水流で追い込みながら排水口に流し、いわゆるピンク汚れの原因となる細菌も「きれい除菌水」を使って除去します。汚れてからきれいにする、というのではなく、汚れる前に原因を取り除いてしまおうと考えたんです。

福田サザナの「お掃除ラクラクほっカラリ床」はもともと汚れを落としやすい床ですし(親水パワーの効果)、抗菌・防カビ仕様の「お掃除ラクラク排水口」も付いています。さらに汚れの原因を抑えることで、きれいがぐっと長もちするようになりました。お風呂から上がったらスイッチを押すだけ。お掃除の回数が驚くほど減りますし、その分つらい姿勢からも解放されます。

お風呂掃除がスイッチひとつで。

福田それがひと月約300円のランニングコスト(1日1回使用の場合)でできるんです。

汚れの原因を 追究することから始まった

黒カビの原因は角質とおっしゃいましたが、どのようにわかったのですか。

村橋どんな汚れにも、その原因があるはずです。黒カビやピンクのヌメリは、何が原因で、それらの原因物質が、いつ、どこに、どのくらい蓄積されて、目に見えるようになっていくのだろうと。そこで皮脂、角質、石けんカス、水垢などをターゲットに研究を重ねました。その結果、みなさんがとくに気になる黒カビについては、人間の肌の表面からはがれ落ちる角質がカビ菌の大好物で、一番の栄養源であることが、今回初めてわかったんです。

それは新発見ですか。

福田私もカビの菌がいるから黒カビが生えるくらいにしか思っていなかったんです。

村橋黒カビの菌は種類がたくさんあって、いっぺんには退治しきれません。でも、繁殖の原因である角質をなくせば一網打尽にできます。

食料がなくなるんですものね。では、ピンク汚れのほうはどうですか。

村橋こちらは以前からわかっていましたが、水道水に極微小量含まれるメチロバクテリウムという細菌です。彼らが床に住みついて家族をつくり、コロニーを形成するとピンク色になってくるんです。

床ワイパー洗浄という画期的な機能

村橋「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」は、2段作動で床をきれいにします。かかる時間はトータルで約23分。まず床ワイパー洗浄でゆっくり3回(標準モード)、一方の端から反対の端まで水を放出。大量の角質をしっかり洗い流します。

黒カビの原因を追い出すわけですね。

村橋最後にもう1回、ノズルから「きれい除菌水」を同様に放出して、床に住みつく前のメチロバクテリウムを除去します。

ピンクのコロニーをつくる前に除菌する、と。

村橋お風呂に入ると、ひとりにつき1回あたり約1000万枚もの角質が落ちるのですが、まずは角質をいかに効率よく、床から排水口へ追い込むか。それが課題でした。床に付着していない角質は、思いのほかふわふわしています。水をざっと流すと、水流に運ばれて壁にくっついてしまう。これでは逆効果です。ホースの先を指でつまんで調整しながら、水の出し方と角質を追い込んでいく動きを何度も試行錯誤しました。その結果、板状の吐水で途切れのない水の膜をつくり、角質を追い越さないよう、ゆっくり排水口に追い込む方式にたどり着いたのです。

どんな条件でも同様の効果を発揮する

一番苦労されたのはどこですか。

村橋ノズルの形状ですね。角質を除去するには、一定の洗浄圧が必要なのですが、お風呂の広さも水圧もお宅によって違います。一つひとつオーダーメイドというわけにはいかないので、どんな条件でも同様の効果が出せる形状を目指しました。

福田床の広さが商品によって違うんですが、水流が強すぎると角質が壁まで飛んでしまうし、弱いと隅まで届きません。水の膜に隙間があれば、その部分は洗い残されてしまいます。

村橋数十ミクロン単位の修正も含めて、100本以上のノズルを試作しました。来る日も来る日も最適な解を見つける作業。もちろん、効果を確認するためには、そのたびに残った角質を数える作業がもれなくセットで付いてきます(笑)。

福田本当に、残った角質を顕微鏡を使って、すごい回数数えたんですよ。

あらゆるところに「きれい除菌水」を

今後はどういうことを目指していますか。

福田「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」は、シンラやサザナの決まったタイプでしか選べません。できれば装置の自由度をあげて、どんなお風呂にでも取り付けられるようにしたいですね。

村橋「きれい除菌水」は、どこにでもある水道水から機能水をつくり出して除菌します。そしてその後、つくったものはもとの水に戻ります。環境への負荷がゼロ。つまり環境の「きれい」も守るわけですね。日本の「きれい」に対する意識や技術は世界から注目されています。これをとことんきわめたい。もっともっと「きれい除菌水」が活躍する場を増やしていきたいですね。

  • 村橋利行氏の画像

    村橋利行Murahashi Toshiyuki

    TOTO㈱
    機器水栓事業部
    水栓開発第一部
    アクアオート開発グループ
    むらはし・としゆき/1967年福岡県生まれ。92年山口大学大学院生産機械工学専攻修了。同年TOTO入社。94年発売のアルカリ7をきっかけに、改質水の技術開発に従事。2014年きれい除菌水プロジェクトに参画。「きれい長もち」の技術開発に携わる。15年に自動水栓、16年にキッチン、洗面所と展開。浴室に至る。

  • 福田祐子氏の画像

    福田祐子Fukuda Yuko

    TOTO㈱
    浴室事業部
    浴室開発部
    浴室商品開発グループ
    ふくだ・ゆうこ/1981年神奈川県生まれ。2004年明治大学理工学部建築学科卒業。同年TOTOバスクリエイト入社。浴室開発部でシステムバスルームの商品開発に従事。新商品では、抗菌・防カビ仕様の排水口、床ワイパー洗浄(きれい除菌水)の開発を担当。