LOVE ARCHITECTURE  ラブ アーキテクチャー
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KIKI

キキ 東京生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業。同大学在学中よりモデルとして活動しているが、雑誌でのコラム執筆や2004年末公開の映画『ヴィタール』(塚本晋也監督作品)での俳優デビューなど、モデルの枠を超えたさまざまなフィールドで活躍中。ナウ・ファッション・エージェンシー所属

TV−CMや雑誌、広告でおなじみの人気モデル、KIKIの初めての著書は、写真やスケッチも本人の手による建築探索紀行エッセー。
東京国際フォーラムや札幌のモエレ沼公園、日光東照宮など古今の「気になる建築物探索」をはじめ、自身のホームページ『KIKI TERRITORY』に連載中のエッセー、美術館めぐりなど、シンプルなタッチの巧みな文章で読み手を"KIKIワールド"に招待してくれる。見たもの、感じたことを素直な感性で表現した『LOVE ARCHITECTURE』は、だれもが楽しめる内容だが、特に街歩きや旅行好きの女性のみなさんには必読&必携の1冊。
というわけで、できあがったばかりのデビュー作を手にした感想から、インタビューはスタート。



「うれしい! の一言。3年半くらい前に自分のホームページを立ち上げて、いろいろと書き綴ってきました。いずれは1冊にまとめてみたいという気持ちはあったけど、現実にこうして形になってみると、この3年半の年月分の存在感が伝わってきます」

――読みやすく、こなれた文章ですが、以前からものを書くのは好きだったんですか?

「小学校のころから、作文は苦手でした。興味がないテーマで、義務で書かされるのはツラかった」

――なにごとも、枠をはめられるのはきらいですか?

「う〜ん……(笑)。たとえば、写真にしても"こういうふうに撮ろう"というのではなく、なにかを感じた瞬間を切り取るという感じなんです。予期しないものが写っていて、それが面白いということが多い。文章でも、そういうことがあります。その意味で、枠にはめられるのは得意じゃないかも」


今回の出版の話は昨年末、TOTO出版の編集者からオファーがあって決めた。この編集者は彼女がファッション誌『装苑』に以前、連載していたコラム(本作にも収録)の愛読者で、その時から「彼女の文章とその視点に注目していた」という。

――本を出しませんか、という話が来たときはどんな気分でしたか?

「ちょうど、クリスマスの直前だったので、ひと足早いサンタさんからのプレゼントという感じでした」

――装丁やレイアウトなどにも、いろいろとアイデアを出したそうですね。

「装丁は結構、自分の意見を言いました」

――デザイナーや編集者は受け入れてくれましたか?

「90%以上は、私のアイデアを生かしてくれました。以前は装丁なんてあまり気にしなかったんですが、自分の本ということになると、自分の部屋の本棚を見ても、書店の棚を見ても、まず装丁が気になってしょうがない(笑)」

――この装丁のコンセプトを教えてください。

「カヴァーの紙質もそうですが、気軽に持ち歩いてもらえる本にしたかったんです。ちょっと汚れたり、折れたりしても、それが味わいになるような装丁。街を歩いたり、旅行のときなどに、丸めて持っていてほしいな、と。装丁には結構、自信あります」

――初めての"本づくり"で、発見したことはありますか?

「まとめる作業というのは、再確認する作業なんですね。どこかでなにかを見ても"ああ、よかった"だけで終わっては、思い入れも時間とともに薄まっていく。その印象を文章に書き起こすことで、そのときの"思い"を再確認する。写真も、一瞬の風景を切り取って、それを画像やプリントで改めて自分の心に刻み込んでいく。今回、文章や写真を一冊にまとめることで、そのときどきの"思い"をより深く確認しなおすことができました」

――建築物に対する意識も変わりましたか?

「建築物というのは本来、それだけで存在しているのではなく、人間との関わりがあって初めて成立するものです。正直なところ、以前は人間と建築物を切り離して見ていた気がします。そうではなくて、建築物と人間、そしてそれらを取り巻く周辺の風景も含めて見ることが大切だと強く感じました。この本をつくる過程で、気づいたらそういう意識になっていたんです」


 『LOVE ARCHITECTURE』は、建築物の美しさや面白さを伝える本としても十分に読むことができるが、それに加えて紀行エッセーとして、旅の楽しさも味わえる。"建築探索紀行エッセー"のキャッチフレーズは、誇張ではない。

――国内外、仕事でもプライベートでも、いろいろなところを旅していますね"KIKI流"旅の楽しみ方が伝わってきます。

「紀行に関しては、この場所ではこんな楽しみ方があるんだと読者に知ってもらいたい、という気持ちで書いています」

――どんな場所が好きですか?

「海が好き。海の見えるところに行きたいですね」

――海なら、どこでもいい?

「地中海! あの、海の青さが好き。気候もいいし」

――スペインやイタリアなど、ラテン系の風土がお好みのようですね。

「スペインのバルセロナでは、ガウディに"会って"きました。実は大学1年のとき、バルセロナ行きを計画したことがあったんですが、直前になって仕事の都合でNG。こんどこそ、という気持ちで行ってきました」

――ガウディに"会った"というのは?

「ラ・ペドレラ(石切り場)と呼ばれている、ミラ邸に行ったんですが、建物内に足を踏み入れた瞬間、”ガウディにどこかから見られてる”と感じました。それと同時に、ガウディの鼓動が聴こえるような気がしたんです。建物全体に、生命力が感じられました」

――日本の建築物でも、KIKIさんが生まれる前に建てられたものにも興味があるようですね。

「昭和期の、もうすぐなくなりそうな建物にひかれるところはあります。あの、年輪を重ねた独特の存在感というか、空気感はなんとも言えません。たとえば、箱根の富士屋ホテルや雲仙観光ホテルでは玄関の扉を開けると、何十年も前の空気が流れているような気がする。そんな空間がつくり出す"重厚さ"は素敵です」


 ジャンルを超えた活動を続ける彼女だが、2004年末にはこれまた初めての映画が公開されるなど、表現の場はますます広がっていきそうだ。

――映画『ヴィタール』の公開(渋谷アミューズCQN、新宿K's cinemaにて2004年12月お正月ロードショー)も間近ですが、TV−CMとは違った面白さがあったのではありませんか?

「TV−CMでも演技はしますが、映画の場合はそれよりはるかに役柄の人格を明確にしなければなりません。TV−CMでは、主役はあくまでも商品ですが、映画は人間を描くわけですからね。役柄をつくるということの面白さがありました。次に映画出演の機会があったら、こんどは私自身の性格とはかけ離れた役を演じてみたいですね」

――インタビューの時間も、そろそろタイムアップが近づいてきました。最後に、このホームページを読んでくれているみなさんへ、メッセージを。

「本の帯に"友だちを探すように、街や建築を楽しもう!"と書いてあります。このコピーは、私自身とても気に入っています。友だちというのは、つくろうと思ってできるものではありません。予期せぬ出会いや、ただの知り合いだった人となにかのきっかけで急に親しくなったりして、本当の友だちになれる。建築も同じなんです。初めて行った場所で予期せぬ発見があったり、いつも通りすぎている街の見慣れた建物に、ある日突然、興味を持つことがあります。いつも柔らかな心と目を持っていれば、いろいろな場所にいろいろな新しい発見があると思います」

――『LOVE ARCHITECTURE』の第2弾は、いつごろ出版の予定ですか?

「3年半、書きためて、ようやく1冊になったわけだから、第2弾は3年半後かな(笑)


 取材・構成:平原康司(有限会社ジャッジ)
撮影:小松潤
2004年9月28日 ギャラリー・間にて
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