――本を出しませんか、という話が来たときはどんな気分でしたか?
「ちょうど、クリスマスの直前だったので、ひと足早いサンタさんからのプレゼントという感じでした」
――装丁やレイアウトなどにも、いろいろとアイデアを出したそうですね。
「装丁は結構、自分の意見を言いました」
――デザイナーや編集者は受け入れてくれましたか?
「90%以上は、私のアイデアを生かしてくれました。以前は装丁なんてあまり気にしなかったんですが、自分の本ということになると、自分の部屋の本棚を見ても、書店の棚を見ても、まず装丁が気になってしょうがない(笑)」
――この装丁のコンセプトを教えてください。
「カヴァーの紙質もそうですが、気軽に持ち歩いてもらえる本にしたかったんです。ちょっと汚れたり、折れたりしても、それが味わいになるような装丁。街を歩いたり、旅行のときなどに、丸めて持っていてほしいな、と。装丁には結構、自信あります」
――初めての"本づくり"で、発見したことはありますか?
「まとめる作業というのは、再確認する作業なんですね。どこかでなにかを見ても"ああ、よかった"だけで終わっては、思い入れも時間とともに薄まっていく。その印象を文章に書き起こすことで、そのときの"思い"を再確認する。写真も、一瞬の風景を切り取って、それを画像やプリントで改めて自分の心に刻み込んでいく。今回、文章や写真を一冊にまとめることで、そのときどきの"思い"をより深く確認しなおすことができました」
――建築物に対する意識も変わりましたか?
「建築物というのは本来、それだけで存在しているのではなく、人間との関わりがあって初めて成立するものです。正直なところ、以前は人間と建築物を切り離して見ていた気がします。そうではなくて、建築物と人間、そしてそれらを取り巻く周辺の風景も含めて見ることが大切だと強く感じました。この本をつくる過程で、気づいたらそういう意識になっていたんです」 |