建築は数年、数十年、あるいは数百年と立ちつづける。その建築が使われ、長い時間が経過するなかで、材料の質感も変わり、修復を繰り返しながら改築も増築もなされ、そこには多くの人々の痕跡が刻まれていくだろう。
少し前のこと、懐かしい昔のこと、そしてもはや歴史ともいえる時代のこと。そうして建築はその時々のさまざまな事情を乗り越え、それをほのかに、時には大胆に一身に携えている。
今は確かめるまでもなく、リノベーションの時代。中古とは感じさせないまったく新しいデザインで上塗りするものもあるが、一方でせっかく時を積み重ねてきた建築の味を隠すのではなく、それを生かした方法もあるはずだ。
加齢を否定的にとらえてばかりでは未来がないのだから。
時の積み重ねが表現されたデザインを探りたい。
表紙/「花重リノベーション」の床の間。
2024年4月1日発行