坂倉準三建築研究所に入って6年目に、坂倉準三の生家がある羽島市から、市制5周年記念事業の庁舎の設計を頼まれ、初めて坂倉と直結する関係のもとに、設計から監理までをとおして担当し、つくった作品がこの建築である。
蓮田に囲まれた敷地、町村合併のシンボルとして南北正面性の願望、庁舎に公民館、図書館、消防車庫の併設の要望など、この建築に求められた象徴性、複合性、場所性の設計課題。坂倉準三と一緒に行動した土地と人々との接触と交流。探り出し、考え巡り、建築に具体化する作業過程。設計という創造活動の面白さと現在迄続く建築的課程を、この建物が私の身体に発芽させるものとなった。坂倉からは比較的任され、担当者としてやりたいことを自由につくっていた。屋根の形は、現場に乗り込んで以後、単独で設計の変更を企て、手紙に添えた図面だけで坂倉から承認を貰えた、忘れられない思い出もある。