ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
石山修武

幻庵

1975年
作品写真
(藤塚光政撮影)

建築家という職業には若さは邪魔なモノでしかない。今は、つくづく、それがわかる。複雑な総合性は複雑としか言いようの無い体験から生み出される事が多いからだ。
20代の自分を、もちろん、今でもはっきり思い出す事ができる。当然、邪魔な若さを山程背負っていた。でも、すでにいくつかの挫折を体験していた。その最大のモノが師であった川合健二との出会いであり、出会い頭の敗北でもあった。巨大なコルゲートパイプに棲む技術者川合健二は私に純然たる技術世界の秩序を垣間見させ、同時に、それが自分には向いていない事、その能力を持たぬ事をアッという間に悟らせた。それで20代の終りに「幻庵」が生まれた。ここには技術世界への憧憬と、同時にアキラメがある。純然たる技術者になりそこなった者のアキラメがシーンとして音を立てている。
それは50代の初めの今になるまで、続いているから、余程、深いモノであったにちがいない。


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