独身者のためのベッド：ザ・ロータリィ・ノータリィ

古来より劇場では「プロシニアム」（ｐｒｏ「前方」＋ｓｃｅｎｉｕｍ「後方」）で舞台と俳優を物理的に分断していた。だが、デュシャンの「大ガラス」にインスピレーションを得た「ロータリィ・ノータリィ」の舞台装置で、我々は敢えて「インターセニアム」（舞台の中央に境界線を設定）した。不透明な仕切りと鏡を用いて、舞台をふたつに分断したり仮想的に融合する装置である。これによってその場に映し出された仮想のイメージは、実像のイメージに限りなく近くなる。「ロータリィ・ノータリィ」の舞台は、我々が初めて手掛けた舞台演出である。ここで我々は、前から興味を抱いていた「二元性の崩壊」というテーマに取り組んだ。二元性、すなわち相反する存在である「実像」と「虚像」、「文字による表現」と「絵による表現」、「男らしさ」と「女らしさ」、「叙情性」と「非叙情性」において、両者を隔てる壁はすべて消滅してしまったのではないか、という考えがここで追求された。