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UD Style TOTOのユニバーサルデザイン

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TOTOと日経デザインが見つけた、身近なユニバーサルデザインを紹介するサイト「ホッとワクワク」。第21回からは再び、いろいろな施設のユニバーサルデザインにフィーチャーしていきます。

暮らしのUD

ホッとワクワク

TOTO×日経デザイン

第27号
楽しみつつ本を探せる気配り書店2

第26回と第27回は、東京・丸の内にある「丸善 丸の内本店」を取材しました。2004年に商業施設・丸の内オアゾの中に設けられた1750坪の店舗は、本を言葉の芸術ととらえた「Book Museum」をテーマに据え、「欲しい本がすぐ見つかる」「新たに読みたいテーマに出会う」ために、たくさんの工夫を凝らしました。ゾーニング、レイアウト、照明の光のコントロールなど、その工夫は隅々に渡り、本が好きな人はもちろんのこと、本のビギナーも感動に出会える空間になっています。今回は本探しが一層楽しくなるサインの工夫、空間づくりの工夫にスポットを当てました。

丸善 丸の内本店内全景店内ほぼ中央に背骨のように真っすぐ通る「ミュージアムゾーン」を見渡す。この通路を軸にして、左右にさまざまなジャンルの本棚が配列されている(写真提供:丸善)

アイデア4 売り場まで導く、遊び心いっぱいのサイン

下の写真をご覧ください。これは、「ホッとワクワク第26回」でご紹介した松丸本舗というコーナーまでお客様を導くサインです。エスカレーター沿いの壁に描かれた階段状に続く線からは、4階まで上がっていくイメージが伝わってくるでしょう。階段状の線と赤い色は、同コーナーの本棚のイメージでもあります。これをたどりながら、人はごく自然にたどり着くことができます。線にからめて書かれた言葉は単なる説明ではなく、このコーナーを象徴するユーモアたっぷりのキャッチコピー。本探しのワクワク感が階を上がるたびに増してきます。
また、この店舗で代表的なジャンルのコーナーを表すサインも楽しいもの。「辞典」「政治」などの言葉が半立体のレリーフになっています。そのデザインは、本に使われる活字がモチーフ。本や書店のイメージが際立ち、知的冒険の気分がますます高まります。

エスカレーターエスカレーターの壁に描かれた、松丸本舗のサイン。シンプルな線と少ない文字での表現だが印象に残る(写真:特記以外は山田愼二)

半立体のサイン各ジャンルのコーナーを示すサイン。半立体なので陰影ができ、正面はもちろん斜めの位置からも判別しやすい

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アイデア5 本棚が見えるテーブルで、ゆっくり本を吟味

雑誌や実用書を扱う2階フロアの大きな窓のすぐそばに、テーブルと椅子が置いてあります。ここは、棚に並んでいる本を選び、座ってゆっくり読むための場所。本を買う前にじっくり内容を確認することができます。平日の日中は仕事のショートブレイクに立ち寄り、窓からの光を浴びながら本を楽しんでいく人も多いといいます。たくさんの本をチェックできるので、普段は目に留まらない意外なテーマに出会えたという人も少なくありません。
他のフロアでは、棚の合間などに小ぶりのスツールを並べ、お客様が座って本を吟味したり、本探しの合間にひと休みできるようにしました。さまざまなお客様が、それぞれのスタイルやペースで本を探せるように空間づくりやインテリアを工夫する。この店舗では、お客様へのやさしさが本探しのプロセスで形になっています。

本棚のそばのテーブル本棚が並ぶすぐそばの、東京駅舎の見える窓際にテーブルがゆったりと並べてある

壁際にあるスツール各階の壁際や本棚の端部の、歩行に邪魔になりにくい場所にスツールを置いている。いつでも自由に使用可能

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アイデア6 子供たちが床に座って読書する、絵本コーナー

幼児は絵本が大好き。絵本が置いてある児童書コーナーでは、つい床や付近の段差などにペタンと座って膝の上に広げ、読み出すことも少なくありません。そういった幼児の行動パターンを予測して、丸善丸の内本店では、床にラクに座れるよう児童書コーナーの床にカーペットを敷きました。タイルの床と異なり、座っていてお尻が痛くなったり冷たくなることはありません。また、子供用のスツールも十分に常備しています。幼児には年齢、月齢によって発育や動作に個人差がありますが、いずれか好きな座り方で絵本を楽しむことができます。大がかりな子供スペースを設計しなくても、ちょっとした心配りや工夫で、空間は多くの子供たちが楽しめる場に変えられるのですね。

児童書コーナー大人向けの売り場の一角に、児童書コーナーがある。大人のコーナーとの違いは床のカーペットのみ

(日経BP社「日経デザイン」 介川亜紀 フリー記者)2012年1月27日掲載
※『暮らしのUD ホッとワクワク』の記事内容は、掲載時点での情報です。

次回予告
第28回は、2012年2月下旬に公開予定です。
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