特集1/エッセイ

 現在のこの建物を観察するなら、古い石の壁は敏感な新しい木の皮膚のまわりに保護層を形成して物理的な負荷から守っており、同時に新しい屋根が、いつ壊れてもおかしくない古い石の壁を守っているというように読み取れる。新たな木製の家の窓は、古いものから投射したかのように数センチだけ小さく、すべての個所で古い壁は層の縁をわずかに見せるだけだ。新しい窓は、廃墟でよくあるような単なる穴だ。窓枠は使わず、絶縁ガラスを接着してある。寸法はそのままだ。材料は全体に最低限しか使っていない。壁用の38mm厚の耐水性化粧合板、ガラス板、簡単に曲げて角張らせただけのブリキの屋根縁、そして屋根葺き材は暗灰色の薄いスレート。そのため屋根は細い線のようにしか見えず、ぼろぼろの壁の冠の上に漂い浮かんでいる。訪れた人は入り口で、この建物の新旧の異なった部分同士が相互に作用しあっていることにはっきりと気づかされる。古い家畜小屋の窓が投影されたかのごとく、新築部の木壁にも窓が穿たれているが、そのひとつの窓は、比率や寸法を古い石壁と同様に保ったまま、木壁の角を包み込み折り畳んだかのようなコーナー窓になっている。
 そのようにして、ここを訪れる人は、この建物の本質を認識するための重層的な視点と、この家を読み解き、望むらくは理解するのに十分な時間留まることを要求されているのだ。ぞんざいな目には廃墟と映っても、本当に見る意欲のある人には、小さな新しい世界が開ける。この建物はギャラリースペースとして設計されたのだが(そのためSchaustall「陳列小屋」の名を冠する)、近隣のホテルの集団作業の場としてもよく利用されている。

  • 前へ
  • 4/5
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら