展覧会
TOTOギャラリー・間

カリタス ベルギー・メッレ/2016 ©Filip Dujardin

2019年 夏号アーキテクテン・デ・ヴィルダー・
ヴィンク・タユー展
「ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア」会期/2019年9月13日(金)~11月24日(日)

2018年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展において、新進気鋭の建築家へ贈られる銀獅子賞を受賞し、世界的にも注目を集めつつあるベルギーの建築家ユニット、アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー(以下ADVVT)。
教育も建築の重要な一部分だととらえ、第三者の視点を自身の作品に反映させるADVVTは、TOTOギャラリー・間での展覧会に先がけ、日本の大学でワークショップを実施しました。
その意図を手がかりに、彼らの活動と展覧会のコンセプトを紹介します。

VAi-exposition展示風景 ベルンハイムベーク模型 オーストリア・ドルンビルン/2012 ©Filip Dujardin
ベルンハイムベーク ベルギー・ゲント/2012 ©Filip Dujardin

ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア

 アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー(以下ADVVT)は、さまざまなかたちで建築を受容する。その実践には建築だけでなく展示や書籍の制作も含み、とくに教育は重要な部分を占める。私たちが行うことは、これらすべての必然的な結果であると確信している。それは私たちにとって渾然一体のものだ。
 ベルギー・アントワープのdeSingel Art Campus における初めての展覧会を経て、展示はADVVTにとって新しい経験となった。ベルギーの展覧会では、大きな空間をひとつづきの7つの異なる部屋に描き直した。部屋の壁は、私たちが2010年に行ったインスタレーションの材料を再利用してつくった。この「再利用」という行為が、展覧会のテーマの一環だった。展示するということは、もはや展示するだけでなく、思索するという行為になったのだ。
 さらにスイス・チューリッヒのgta exhibition spaceで開催した展覧会[carrousel](メリーゴーラウンド)では、私たちは7つのプロジェクトで構成した展示空間に他者の作品を展示した。他者の作品は、私たちの世界観を十分に説明し得るし、それを私たちの[universum](宇宙)と呼ぶことができる。この展示では作品そのものよりも、[universum](宇宙)を表現するアイデアのほうがより重要になったのだ。
 18年、ADVVTはTOTOギャラリー・間より日本での展覧会開催の招待を受けた。これはもちろん名誉なことだったが、同時に私たちにとっては、自身の作品のみならず、文化的視点での新たな発見を目的とした、さらなる探究を行うための開かれた機会でもあった。TOTOギャラリー・間の要請は興味深いものだった。それは私たちの実践や作品だけでなく、思索と教育、さらにはADVVTの独自で自由な発想や、私たちの拠点であるベルギー・フランダース地方のコンテクストや背景を含めて提示するというものだった。
 今回の展覧会で、ADVVTは11の住宅プロジェクトを展示する。しかし、それだけではない。ADVVTは、この住宅を表現としてだけではなく、東京工業大学とのワークショップを通して、学生と一緒に探究するに値する課題だと考えている。実際の住宅のコアとなるコンセプトを学生が読み解き、日本のコンテクストに置き換えたプロジェクトを考え、模型やドローイングを制作する。それらがオリジナルの模型の隣に展示される。これらふたつのバージョンの住宅を隣り合わせに展示することで、日本とフランダースという異なるコンテクストが明快に説明されるだろう。このアイデアは、今回の探求をより複層的にし、ADVVTの作品だけでなく、フランダースと日本のコンテクストや文化の違いについても理解を深める機会となる。
 本展示はTOTOギャラリー・間を出発点として、フランダース建築協会の招待により、20年にはアントワープのdeSingel Art Campusで巡回展が開催される予定である。
 探究は続く。フランダースで設計されたほかの建築家の住宅作品が展示に加えられ、その後、同じように世界のどこかで新しいコンテクストが追加され描き換えられていく。
 それはいつまでもつづく探究……終わりのない旅となる。

  • アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユーの画像

    アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユーarchitecten de vylder vinck taillieu

    ヤン・デ・ヴィルダー(1968年生、写真中央)、インゲ・ヴィンク(73年生、同右)、ヨー・タユー(71年生、同左)によって、2010年にベルギーのゲントで設立。明快な理論と豊かな感性が結びついた前衛的な作品で知られる。彼らにとって設計と教育は不可分な存在であり、現在はベルギーのルーヴェン・カトリック大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校( E P F L )、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)にて教鞭をとる。18年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展において、新進気鋭の建築家へ贈られる銀獅子賞を受賞。
    ©Filip Dujardin