展覧会
TOTOギャラリー・間

film 5. 2004 監督/YU SORA 音楽/庄子 渉 ©岡本充男

2019年 春号中山英之展「, and then」会期/2019年5月23日(木)〜8月4日(日)

独自の繊細な作風で注目を集める建築家、中山英之氏。
場の条件を汲みとったうえで詩情あふれる建築を実現する、中山氏の建築の魅力がどこから生まれてくるのかを紐解くために、建築模型や図面だけでは伝えきれない、思考の道筋や、実現した建築の質、完成後の時間の流れを映像で表現します。本展では、ユニークな視点に裏打ちされた、中山氏の「思想」と「実験」を提示します。

film 4. 家と道 監督/坂口セイン 音楽/坂口セイン、中山順子 ©坂口セイン
film 3. O邸 監督/岡田栄造、空間現代 音楽/空間現代 ©岡田栄造

, and then

 この展覧会は、いくつかの映像からなります。過去に建ち、僕たち設計者の知らない時間を過ごしてきた建物たちを映したものが主です。なのでこれは、建築の展覧会というよりも建築のそれから/, and thenを眺める上映会、といったほうが正しいかもしれません。, and thenの時間に建築家はかかわることができないように、それぞれの映像も別人によって撮られ、編集されたものです。だからこれは、ばらばらなイメージの並んだ小さな映画祭のような展覧会、ということもできるかもしれません。けれども、映画が時に私たちにとっての現実をそれ以上に語ることがあるように、会期中だけ現れるこの小さな映画館が、現実の敷地ともうひとつ、ここだけの, and thenを訪ねる経験になればいいなと思います。

film 2. mitosaya 薬草園蒸留所 カメラ/江口宏志 企画/川村真司 ©伊丹 豪
film 1. 弦と弧 監督/八方椎太 ©中山英之建築設計事務所

映画、建築

 どうして映画なのか、それにはもうひとつ理由があります。(ドキュメンタリーという分野もありますが)本質的に映画というのはつくりものです。そして僕たち建築家もまた、つくりものをつくることしかできません。長年にわたって手を入れられ続けたすばらしい民家があったとして、ではそれを再現すればすばらしい建築になるのかといえば、そんなことはありません。それでも私たちは映画を観るとしばしそのことを忘れて、そしてよくこんなふうに言うのです。「リアルだった」。このリアルという言葉には、「再現性」と「現実性」という、ふたつの異なる意味が混ざっています。前者は恐竜や、ローマの騎馬戦や、別れ際の涙だったりします。リアルなシーン、リアルな演技。こちらはわかりやすいですよね。では後者の「現実性」とはなんでしょう。これは、映画のなかでなく、私たちの内側にあるものです。映画を観ることが、自分や、自分を超えた過去の経験や記憶の束に働きかけて、結果湧き上がってくるものが見せる、それはもうひとつの現実のようなものです。おもしろいのは現実性というリアルが、時に再現性のリアルとは無関係なことです。たとえば主人公が歌い踊るミュージカル映画など、はじめから映画の側でつくりものであることをこれでもかと告白しているようなものですから。けれども時に、私たちはそんなミュージカル映画に「リアル」を見るのです。  僕たちも、自分たちにしかできない方法で、何かの再現ではない建築をつくりたい。つくりものではあるけれど、そこに生きられる生が、その内から立ち上げる現実性のようなものを、僕たちも目指しているのだと思います。だからこれは、映画というつくりものがそれゆえに見せる現実性に憧れた建築が、それから/, and thenの現実を生きる、その映画を観る展覧会、でもあります。
 もうひとつ。映像には始まりと終わりがあるので、好きなときに行き、自分のペースで会場をまわれる展覧会とは、ちょっぴり相性がよくないかもしれません。そんな意味でも展覧会には、できれば映画館に出かけるような気分で来てもらえたらうれしいです。もちろん、映っている建築についてなら僕たちも、カーテンの開閉機構の仕組みから、影響を受けた映画監督の言葉まで、すべてを知っています。ギャラリーが映画館なら、それらが展示されたロビーも忘れずに用意したいと思います。

中山英之講演会「, and then」

2019年5月30日(木)18:30~20:30
イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1飯野ビルディング4F)
500名、参加無料
事前申し込み制
TOTOギャラリー・間ウェブサイトよりお申し込みください。
4月24日(水)まで
  • 中山英之氏の画像

    中山英之Nakayama Hideyuki

    なかやま・ひでゆき/1972年福岡県生まれ。98年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、07年に中山英之建築設計事務所を設立。14年より東京藝術大学准教授。おもな作品に「2004」(長野県、06年)、「O邸」(京都府、09年)、「Yビル」(東京都、09年)、「Y邸」(広島県、12年)、「石の島の石」(香川県、16年)、「弦と弧」(東京都、17年)、「mitosaya薬草園蒸留所」(千葉県、18年)など。おもな著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房、10年)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版、18年)など。おもな受賞に、SD Review 2004 鹿島賞(04年)、第23回吉岡賞(07年)、Red Dot Design Award(14年)など。進行中のプロジェクトに「Printmaking Studio/ Frans Masereel Centrum」(ベルギー、19年予定)、「Residential and Daily Care Centre in Wommelgem」(ベルギー、21年予定、以上2作品はLISTと協同)など。
    ©加藤孝司