新商品開発物語

2018年 夏号お風呂にも、「ファーストクラス」ができました。

システムバスルーム「SYNLA(シンラ)」 2018年8月発売

リラックス&リフレッシュ……お風呂の中心である浴槽を、どこまで快適にできるのか。TOTOのシステムバスルームSYNLAがリニューアル。人間工学の粋を集めた「ファーストクラス浴槽」と、心地よさをきわめた「肩楽湯」「腰楽湯」の魅力について、開発者のふたりがご案内いたします。

TOTO㈱ 浴室事業部 浴室開発部 浴室商品開発グループ
大庭崇嗣
TOTO㈱ 浴室事業部 浴室開発部 浴室機器開発グループ
川原健一

目指したのはお風呂の王道
「リラックス&リフレッシュ」

新製品のコンセプト「リラックス&リフレッシュ」はどのような経緯で生まれたのでしょう。

大庭崇嗣(以下、大庭)お風呂で「リラックス」、あたりまえですか(笑)。じつはアンケート(*)でお風呂に対する要望の上位に上がってくるのは「掃除のしやすさ」や「保温性」など、機能的な部分です。そのあたりはTOTOもずっと注力しています。しかし、リフォーム需要の中心となる50代、60代に絞ると、「リラックス&リフレッシュ」のスコアがぐっと上がってくるのです。

なるほど。

大庭ターゲットにふさわしい高級グレードのSYNLA。であればこそ、清掃性は保持しつつも、お風呂に本来求められる快適さ、気持ちよさ、いわば王道をとことん追求してみようということになりました。

ヒントになったのは、海外で評判の「フローテーションタブ」だとか。

大庭昨年、住設器具の見本市「ISH」でTOTOが発表した大型浴槽で、あたかも横になって浮遊しているような感覚が味わえるものです。

川原健一(以下、川原)中国やドバイ、ヨーロッパなどの富裕層に人気ですね。

それをシステムバスにもち込んだ、と。

大庭フローテーションタブの浴槽は、仰向けに寝たときの身体に沿うような形状になっています。身体を支える支点がたくさんできるため、各部にかかる荷重が軽減できるのです。その「支点を増やす」という考え方を、システムバスにもち込んだのが「ファーストクラス浴槽」です。

支点を増やすとは、どういうことですか。

大庭ご自宅でお風呂に入ったときのことを、思い出してみてください。従来の浴槽だと、背中の一部とお尻、足の3点で身体を支えています。

そうですね。

大庭「ファーストクラス浴槽」は、背もたれの上にヘッドレストが付き、頭も支えます。支点が4つに増える。安定することで、その分身体が軽くなり、お湯の中でふわふわ浮くような感覚になるんですね。また、ヘッドレストに頭をつけたときに背中が浴槽から離れないよう、身体のラインに沿った浴槽の形状にこだわりました。その分、背中の接地面積が広く、ゆったり身体をホールドしてくれる。まさに「ファーストクラスの入り心地」といえるでしょう。

「肩楽湯+腰楽湯」の圧倒的な気持ちよさ

今回のSYNLAには、新しい仕組みの噴流技術が採用されたそうですね。

川原先ほどの「ファーストクラス浴槽」についている、「肩楽湯」と「腰楽湯」というTOTO独自のメカニズムです。

豪華浴槽の仕様ということですね。

大庭ご家庭でジェットバスを使いたいというお客さまの声が多かった(*)ので、思い切って標準装備にしようと。

川原毎分約135リットルというたっぷりの流量と、気泡を含まないやわらかな水の流れが、ふたつの「楽湯」の特長です。肩には、ヘッドレストの下のワイドなスリットから、お湯が切れ目なく広がっていって、包み込まれるような心地よさが生まれます。左右の腰にはまるで手の動きのようなランダムでやわらかい刺激が注がれます。

大庭社内モニターからも絶賛されたのですが、両方を同時に使うことで、圧倒的な解放感が生まれるのです。お湯は循環させて使うので、節水性も従来どおり。

「肩楽湯」は今回新開発された技術ですね。

川原技術的にとても大変でした。LED照明を組み込んだ薄いヘッドレスト、その中のカーブしたスリットから、大量かつ切れ目のないワイドな流れをつくり出さなければなりません。コンピュータによるシミュレーションを何度も繰り返し、素材や製造工程に至るまで新しい方法を取り入れることで、ようやく完成しました。

「腰楽湯」にはTOTOの特許技術が使われているそうですね。

川原フローテーションタブにも使用されている「ハイドロハンズ」です。

「水の手」というような意味ですか。

大庭まるで手の動きのような、やわらかくて変幻自在の水流をつくり出したいという想いが込められています。

川原従来のジェットバスは気泡を含むため、長時間浴びるとかゆくなるとおっしゃる方がいます。そこで流れ込むお湯が、特殊な形状のノズルによって気泡を含まない噴流となって、やわらかいランダムな動きをしながら旋回するようにしたのです。長時間浴びても肌にやさしく、音も従来のものに比べてぐっと静かになりました。

ジェットポンプによって同時稼動を実現

肩と腰、同時に刺激できるのがいいですね。

川原ここが今回、一番苦労した部分ですね。ふたつの水流をきちんと動かすためには、通常それぞれにポンプが必要です。広い浴室なら、それも可能ですが、システムバスだとそうはいきません。浴槽の内壁と外壁(防水パン)のあいだに納めるために、小型のポンプをひとつ設置するのがやっとです。

そうですね。

川原ポンプひとつだと、たっぷりの水量を2カ所から同時に出すのは難しい。さんざん検討した結果たどり着いたのが「ジェットポンプ」でした。

大庭以前、TOTOがパブリック向け大便器に採用した技術です。

川原少ない量の水を勢いよく噴出させることで、まわりから水を巻き込み、大量に流すという仕組みです。ひとつのポンプで、ふたつの出口から同時に勢いよくお湯を吐き出す。「腰楽湯」を注ぐ一方で、大量のお湯を肩口まで引き上げて流せるようにしました。

大庭もちろん肩と腰、別々に刺激することもできます。

これからも王道を そして安全を

今後の展望をお聞かせいただけますか。

大庭お風呂に関しては、清掃性に対するお客さまのニーズが一番高いので、さらに進化させていかなければなりません。
 SYNLAにとっては、これからも「リラックス&リフレッシュ」。どれだけ気持ちいいお風呂体験ができるかが最も大切です。ひきつづき王道を追求していきたいと思います。

川原今後高齢化が進むなか、安心・安全ということがより重要視されると思うんです。今回の製品でも、循環水の吸入口に髪の毛などが吸い込まれないよう、徹底した安全対策を施しましたが、IoTやいろんなセンサー技術を使って、もっと安全に、安心して入れる浴室を追求したい。それが今後取り組んでいく課題……いや、むしろ急務というべきでしょうね。

*浴室リフォーム実施者の「購買行動」と「購買心理」調査(2015年、TOTO調べ)

  • 大庭崇嗣氏の写真

    大庭崇嗣Oba Takashi

    TOTO㈱
    浴室事業部
    浴室開発部
    浴室商品開発グループ
    おおば・たかし/1979年静岡県生まれ。2005年に千葉大学大学院自然科学研究科建築専攻を修了後、TOTOバスクリエイトに入社。以降、浴室開発部でシステムバスルームの商品開発に従事。おもに戸建て向け商品を担当。新商品では商品全体の企画に携わっている。

  • 川原健一氏の写真

    川原健一Kawahara Kenichi

    TOTO㈱
    浴室事業部
    浴室開発部
    浴室機器開発グループ
    かわはら・けんいち/1970年福岡県生まれ。96年に岡山大学大学院工学研究科機械工学専攻を修了後、TOTOに入社し給湯機事業部に配属。2004年より現職。浴室機器商品の開発を専門に、新商品では「腰楽湯」「肩楽湯」の開発を担当している。