展覧会
TOTOギャラリー・間

OM TERRACE(2017年、埼玉県)<br>大宮駅前の再開発用地に計画された小さな公共施設。<br>6回の公開ミーティングを経て、開かれた屋上テラスを提案し、実現した。現在は運営にも携わる。<br>【設計:藤村龍至/RFA +林田俊二/CFA】<br>写真/太田拓実

2019年 春号藤村龍至展「ちのかたち」
建築的思考のプロトタイプとその応用会期/2018年7月31日(火)〜9月30日(日)

藤村龍至氏はこれまで、「ジャンプしない」「枝分かれしない」「後戻りしない」というシンプルなルールで設計を行う「超線形設計プロセス」を展開してきました。近年では、住民参加型のシティマネジメントにも積極的に関与し、建築・都市といった枠組みを超えた活動を続けています。本展では、スケールの大小にかかわらず、膨大な情報を集約しながら、プロジェクトごとに最適な解を導き出す藤村氏の設計のプロセスに着目し、最新作や新たな取り組みを交えて紹介します。

すばる保育園(2018年、福岡県)<br>保育園での教育の可能性を引き出すため生み出されたコンクリートの連続体。<br>構造最適化設計によって導かれた自由曲面の屋根が、周囲の山並みと呼応する。<br>【設計:藤村龍至/RFA +林田俊二/CFA】<br>写真/太田拓実

ちのかたち
建築的思考のプロトタイプとその応用

 建築を人より遅く学びはじめた私は、設計を少し自覚的に学ぶ必要があり、人が設計している様子を観察するようになりました。やがて設計とは、今知っていることをすばやく「かたち」にすること(プロトタイピング)と、かたちにしたものを「ことば」にして新しい知識にすること(フィードバック)を繰り返すことだと学びました。

 その経験はまず設計を初心者に教えるときに役立ち、次に他者とのコラボレーションやインボルブメントなど、設計を学ばなかった人と設計をしなければならないときに役立ちました。作業の履歴を一つひとつ保存し、ひとつの面に並べることは、歴史から注意深く学ぶ人が、現在を的確にとらえ未来を展望しやすくなるのと同じように、設計をより深くすることも発見しました。

 かつてクリストファー・アレグザンダーは『かたちの合成に関するノート』で、設計を「かたちとコンテクストのミスフィットを取り除くこと」だと定義しました。ただ現代において私たちを取り巻く問題は、コンテクストが流動的で、読めない状況が訪れたときにどうすればよいか、ということです。周辺を調査する、歴史を参照するなど、より確かな解に近づくためのいくつかある方法のひとつとして考えられるのは「3人寄れば文殊の知恵」=より多くの知恵を集めること、です。

 平凡に映る意見の集合も、十分に大きな集合であればより確かな解を得るだけでなく、ひとりの天才を軽く超えていくような、創造的な解を得る可能性も開かれます。他方で建築が今、デモクラシーとポピュリズムのあいだで揺れているように、世論や市場の暴力に抗い、より創造的で、普遍的な解を導くことができるのかどうかは、建築にとって大きく、また困難な問いでありつづけています。

 設計とは本質的に孤独であり、ひとりで考えればよいのだと開き直ることもできます。しかし私たち建築家は今、AI(人工知能)の技術が進化し、より多くのデータを直接扱うことができるようになった社会で、多様性を認め、寛容な社会の実現を信じて、より多くの知恵が集まれば集まるほどよりよいものができる、と言いきることに挑戦するべきではないでしょうか。

 本展覧会では、建築を知識と形態の創造的な関係=「ちのかたち」としてとらえ、設計作業のあらゆる断面を建築的思考のプロトタイプとして等価に扱うことを試みます。設計の履歴を可視化することで、その時々での判断を積み重ねるだけでなく、あるプロジェクトで学んだことを次のプロジェクトに応用するというように、生み出す建築をより深く、新しいものへと進化させることができます。そしてその作業をより多くの人で行い、時に機械による計算を伴うことで、建築的な思考のパターンを組み合わせ、より多くの人でよりよいものを生み出すことを目指す、集合的な知をかたちづくる方法論へと発展させることで、建築を社会のさまざまな課題解決に向けた、創造的な知のツールとして再定義したいと思います。

検索で得られた画像を素材に、深層学習によって形態を生成し椅子をデザインする試み。<br>協力:堀川淳一郎

藤村龍至講演会

2018年8月9日(木)18:30~20:30
イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング4F)
500名、参加無料
事前申し込み制。
TOTOギャラリー・間ウェブサイトよりお申し込みください。
7月17日(火)まで
  • 藤村龍至氏の写真 ©新津保健秀

    藤村龍至Fujimura Ryuji

    ふじむら・りゅうじ/1976年東京都生まれ。2000年東京工業大学工学部社会工学科卒業。02年同大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。08年同大学大学院博士課程単位取得退学。05年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。10年より東洋大学専任講師。16年より東京藝術大学准教授。
    おもな建築作品に「OM TERRACE」(17)、「すばる保育園」(18)、「つるがしま中央交流センター」(18)。おもな著書に『批判的工学主義の建築』(14年、NTT出版)、『プロトタイピング-模型とつぶやき』(14年、LIXIL出版)。近年は建築設計やその教育、批評に加え、超高齢化する郊外ニュータウンや老朽化した中心市街地の再生、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。
    ©新津保建秀