かつて宮脇檀は俵屋旅館のことを実測ばかりしてしまうので「疲れる旅館」と称したという。宮脇に限らずとも、建築家は建築から学ぼうとする。ただ旅館とは異なり、他人の所有物である住宅を堪能することは難しい。まして相当親しくでもない限り、他人の住宅に寝泊まりする機会はほとんどないが、住宅の本質は、少しでも暮らしてみないとわからないのではないか。そこで、たとえば民泊として開かれている住宅を体験してみてはどうか。歴史的な名住宅のなかにも、宿泊できるものがある。宿泊者にとっては絶好の機会だが、じつは収益を得ながら保存が叶う、名住宅にとっての生存の道でもある。そんな「疲れる宿」になった住宅を特集する。
表紙/「カプセルハウスK」の外観。
表紙撮影/川辺明伸
2023年1月1日発行