新商品開発物語

TOTO衛陶工場内での取材風景。お三方が持っているのは、色違いのリモコン。中央にネオレストLS。 写真/川辺明伸

2022年 夏号これからのトイレは横から見る

「ネオレストLS」

ネオレストシリーズがフルモデルチェンジを図る。
従来の造形的な特徴や機能をさらに進化させるとともに金属調のアクセントカラーを施したLS(Luxury Style)は、世界のラグジュアリーなシーンにも調和する。
その美しいフォルムと最新の機能はデザイン、ウォシュレット、衛生陶器各部門の総力を結集して生み出された。

TOTO ウォシュレット開発第一部 商品開発第一グループ
平 憲作
TOTO デザイン本部 デザインマーケティング部 第二デザイン マーケティンググループ デザイナー
大塚航生
TOTO 衛陶開発第一部 衛陶開発 第二グループ
髙野聡士

「ネオレストLS」

新たなネオレストシリーズの誕生

まずネオレストシリーズ全体について、今回変わった点を教えてください。

大塚これまでネオレストファミリーとして、フラッグシップモデルとなる最上位機種のNX(NEOREST X)、次に直線的なフォルムのAH(Advance Hybrid)、やわらかなフォルムのRH(Round Hybrid)、普及モデルとしてのDH(Design Hybrid)という構成になっていました。今回、NXの位置付けはそのままで性能を進化させ、同じくAHを進化させたAS(Advance Style)、RHを進化させたRS(Relax Style)、さらに新しくLS(Luxury Style)が加わりました。

NX、LS、AS、RSというヒエラルキーがあるのでしょうか。

大塚NXは別格として、残りの3つは上位下位というよりもどういう暮らしにお届けしたいか、生活シーンごとの提案ができるようにイメージしています。ASは「合理的で上品」、RSは「やさしく心地よい」、そしてLSは「優雅で贅沢」がキーワードになっています。

新たに加わったLSについて、従来とどのような点が変わったのか、進化したのかを教えてください。

大塚要素でいうと、デザインを大きく変化させたこと、「便座きれい」という新しい機能が加わったこと、便器部分をすべて陶器にしたこと(つぎ目のない形状)の3点です。

金属調のカラーリングを施した
サイドビューにも注目を

まずデザインについて、背景も含めて旧タイプとの違いをお願いします。

大塚「優雅で贅沢」をキーワードにして海外を含めて提案しようということで、国内外のホテルなどの空間もかなり情報収集、調査しました。世界では一体形トイレの薄型化が進み、トイレが置かれる空間も広いことから、デザインを検討する必要があったのです。そのなかで生まれた、ふたのウェーブライン、それを生かす金属調のカラーリング、建築空間で調和をとるための幾何学的な平面形状、ふたを開けたときに体を受け入れてくれるような便座の造形といった点がおもな違いになります。

流れるような形状も印象的ですが、カラーリングが目を引きます。

大塚はい。今回、CMF(COLOR、MATERIAL、FINISH=色、素材、仕上げ)を積極的に提案していこうということで、カラーリングについても議論を重ね、ニッケル、ブラック、ホワイトのカラーバリエーションを提案しています。

3色のなかでもニッケルは珍しいと思いますが、特別な意図があるのでしょうか。

大塚住宅空間のなかでも水栓金具や扉のハンドルなどいろいろなところに金属が使われています。それらと調和する色としてニッケルを選びました。この色は暖色系の木材を使ったやさしい空間でも調和させやすく、トレンドとしても手堅い色だと思います。カラーリングについてはネオレストシリーズに合わせて、タオルリングや水栓なども新色として製品を揃えたので、空間のコーディネイトがしやすくなると考えています。

LSでは、サイドとふたの後ろ側に色が配されていますね。

大塚ふた全体に色を付けたり、ふたを分割して一部に色を付けたりといろいろな検討をしました。しかし空間にあったときに慎ましく見えるあり方を追求した結果、サイドからふたの後ろ側にまわすカラーリングとなりました。海外やホテルではあたりまえの3in1(浴室・洗面所・トイレ)のバスルームを日本でも見かけるようになっていますし、海外の広いトイレを想定すると、フロントビューだけでなくサイドビューも大事になってくるのではないでしょうか。

便座の裏側に、微細ミストを
ピンポイントで吹き付ける

これまでにもいくつかの「きれい」機能がありましたが、新たに「便座きれい」という機能が加わりました。

ウォシュレットではきれい除菌水を使って、これまで「ノズルきれい」「便器きれい」「においきれい」と「きれい」機能を拡充してきて、今回、さらに尿はねの汚れが集中しやすい便座裏先端部をきれいにする「便座きれい」を追加しました。便座の裏面は普段汚れに気付きにくい部分ですが、TOTOで実施したアンケートの結果においても「便座裏の尿はね汚れ」を気にしているお客さまが多くいらっしゃいました。きれい除菌水には漂白効果もあるので、これを便座裏にも吹き付けて「きれい」を長持ちさせます。

具体的な仕組みはどのようになっているのですか。

「便器きれい」のミストとは別に、さらに細かいミストをつくり、気流にのせて便座裏先端まで飛ばして付着させます。ウォシュレットにはもともと温風乾燥機能があるので、これを活用して気流をつくっています。

奥から便座裏の先端にピンポイントで吹き付けるのですね。

そうです。表側までミストが飛んで、便座に腰掛けたときに濡れを感じることのないように、裏側だけに届くようになっています。これを実現するためにミストの粒の大きさや風量など、地道にシミュレーションを繰り返しました。

新機能を追加するには機能部全体をコンパクトにしなければなりませんが。

細かいミストをつくる装置を増やしつつ、薄型デザインを達成するために、すべての部品を徹底的に小型化しています。たとえばノズルは、従来はまっすぐ伸びるものを使っていたんですが、湾曲型のものを開発することで高さを30%程度抑えられるようにしています。

つぎ目のない陶器製の便器

便器部分はつぎ目のない形状になったということですが、具体的にご説明いただけますか。

髙野従来のネオレストでは、タンクを納める部分など後ろ側はパネルを使って覆っていたのですが、全体を陶器でつくることで高級感と清掃性を高めています。

大塚デザインサイドからすると、陶器という素材は、高級感だけでなく本物の自然素材であり、心地よさや人を惹きつける魅力があります。結果的に陶器とパネルの隙間や段差がなくなったことで清掃性も高まったと思います。

技術的にはかなり難しいことだったのでしょうか。

髙野便器の後ろ側にタンクなどを設置しているわけですが、パネルを使ったときと比べるとそれらを格納するスペースがどうしても小さくなります。ですから可能な限り部材を薄くして、スペースが減るのを最小限にする必要がありました。また直線的なデザインだったため、いかにそれを実現するかも苦労したところです。

まっすぐに焼くのは難しいのでしょうか。

髙野アール(曲がり)の部分の違いというのは人の目で見てわかりにくいのですが、直線か少し曲がっているかはすぐにわかりますよね。今回の便器デザインは直線基調のため、デザインの実現に非常に苦労しました。陶器は土と水を混ぜた泥を型に流し込んで、陶器の形をつくり、その後、乾燥、焼成を経て、陶器となりますが、途中段階の水分量のバランスで、曲がり量や生産サイクルが変わります。今回の製品ではこの細かな調整を行うことで、デザイン性と生産性を達成しました。

TOTOが得意とする大量生産の技術を生かし、機能面を充実させ、さらにデザインを進化させることで、またひとつ世界で戦える製品が生まれたということですね。

大塚そうですね。各部署がそれぞれ強みを生かしつつ工夫を重ねたことで自慢できるものになったと思います。ぜひ一度実物を見ていただきたいですね。

便座きれい

微細な除菌ミストを便座裏面に噴霧して、尿はね汚れを抑制する機能。気流によって、微細ミストをピンポイントに便座裏先端にあてる。

つぎ目のない形状

陶器内の限られたスペースに納められた部材。

便器部分のすべてが陶器なので、一体感とともに、清掃性も高まる。

マテリアルカラーセレクション

便器のアクセントカラーとあわせて、同色の各パーツを揃えることができる(ニッケルとブラックの2色展開)。

リモコン&紙巻器
リモコン&紙巻器
取っ手
取っ手
水栓
水栓
タオルリング
タオルリング
リモコン&紙巻器

ネオレストLSに施された金属調の飾り

商品情報

ニッケル
ニッケル

¥482,000
品番/ LS2 CES9820G
¥467,000
品番/ LS1 CES9810G

ブラック
ブラック

¥482,000
品番/ LS2 CES9820E
¥467,000
品番/ LS1 CES9810E

ホワイト
ホワイト

¥432,000
品番/ LS2 CES9820
¥417,000
品番/ LS1 CES9810

*詳しい条件などはTOTOホームページカタログをご確認ください。

  • 平 憲作氏の画像

    平 憲作Taira Kensaku

    TOTO
    ウォシュレット開発第一部
    商品開発第一グループ

  • 大塚航生氏の画像

    大塚航生Otsuka Kazuki

    TOTO
    デザイン本部
    デザインマーケティング部
    第二デザイン
    マーケティンググループ
    デザイナー

  • 髙野聡士氏の画像

    髙野聡士Takano Satoshi

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    衛陶開発第一部
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    第二グループ