大倉和親は森村組に入社し、主力商品である陶磁器の奥深い魅力に
触れ、飽くなき理想追求の道に踏み込みます。
その結果、父 孫兵衛とともに興した日本陶器(現ノリタケカンパニー
リミテド)の初代社長就任をはじめとしてTOTO、日本ガイシを創立、
日本特殊陶業の起業を促し、現在に至るセラミックス王国の基礎を
築きました。
良品の供給、需要家の満足が掴(つか)むべき実体です。此の実体を握り得れば利益・報酬として影が映ります。
利益という影を追う人が世の中には多いもので、一生実体を捕らえられずして終わります。
一番心配になります点は、何ごとによらずナンバー・ワンすなわち我をこすものはなしとなったとき、
とかく自負心が起こりやすいもので、窯業界中のお山の大将となり、とりわけ名古屋という一地方であり、
瀬戸、美濃地方中小工業を付近に見ているがために、知らず知らずのうちに心のゆるみが起こりやすい
ことであります。 これらの同業者は一生懸命にわれわれを目標として、中にはわれわれ以上の工夫を
しているので、当方に少しでも油断があった場合には、これ恐るべき慢心の欠陥に乗ぜられ、知らぬ知らぬ
うちに彼らに先を越せれぬとは限りませぬ。