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TOTO×マガジンハウス 環境と建築:Vol.13 小さな矢印の集合からつくる、CAtの21世紀の建築。


イメージ

Photo:Kanako Nakamura

風を操って生まれた小学校

そんな考えでつくった建築のひとつが、2011年に開校した〈宇土市立宇土小学校〉。
熊本県宇土市は、県庁所在地の熊本市からは電車で15分ほど。
九州ですから夏の日差しや気温はかなりきつく、かつ凪の海として知られる
有明海に近いため、標準的な風速は2m/秒と、ほぼ無風のような状態です。
建て替えで生まれる新しい校舎は、雑木林の中にあるような建物にしたい、と
当初から考えていました。
ここは元の校舎もなかなか独創的なつくりで、
廊下の片側に四角い箱型の教室がずらりと並ぶ“片廊下型”ではありませんでしたし、
私たちが過去につくってきた学校も、オープンスクールだったのですが、
ここではさらに考えを進めています。雑木林に木がめいめいに生い茂るように、
敷地の中にコンクリート製のL字型の壁、「L壁」を離散的に配置し、
建物の外側は、ほとんどすべて、フルオープンにできる折れ戸サッシでくるみました。
この「L壁」が建つことで、「L」の内側部分はもちろん、外側の部分も
クラスの領域になっていきます。さらに、子どもの力でも楽に開閉できるサッシを
開け放てば、気持ちいい風が抜けていくのです。
CFD解析をもとに風の流れを仔細に計算しながら、デザインとのバランスをとり、
実現した建物ですが、実際に建ち上がった建物の中でも、
上手く風が抜けているようです。夏にはサッシを開けてしまえば、
日差しからは守られつつもそよ風が吹く。建物の中にいるのか
外にいるのか分からなくなるほどに、居心地のいい学校です。
同じような考えをさらに進化させて、現在千葉県の流山市で、
小中学校と図書館分館などの地域施設の複合施設をつくっています。
通常、建物は道路に合わせて向きが決まるケースが多いのですが、
ここでは風向に合わせて建物を配置して風を呼び込んでいます。
建物内に入っていくメインの動線は、その名も“風の道”っていうんですよ。
延べ床面積22,000m2と、私たちが今までに国内で設計した建築としては
最大の大きさ。小さな町のようなこの建築がどのようになるか、
楽しみにしていてください。

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風が通り抜ける宇土小学校の教室 Photo:CAt

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風向に合わせて建物を配置した流山市の複合施設
Photo:Kanako Nakamura

住宅や水まわりにおける居心地のよさ。

今は小学校という大規模建築のお話をしましたが、住宅においても、
私たちの考えは変わりません。住宅も、全体的に均一的で高性能であることが
求められてきたけれど、もう少し違うやり方があると思うんです。
やはり風や光、熱といった“流れ”を操ることで、居心地のよさが生まれればいい。
かといって、中間期に気持ちのいい空間を作っておいて、
夏や冬のピークに我慢すればいいとも思いません。
最小限の機器を家の一部につけておいて、たとえばすごく暑い時期、寒い時期には、
その部屋でコンパクトに過ごすというような考え方ができれば、
過度なスペックや余計なエネルギー消費も抑えられるはずです。
特に東京など都市部の住宅では、家にいる時間のうちの大きな部分を、
水まわりの近辺で過ごしているように思います。だから水まわりの心地よさは、
住宅においてかなり重要ですよね。
旧来の住宅では奥側、裏側に押しやられていたバスルームやトイレが、
どんどん開放的になりつつあるのも、そういう理由だと思います。
水まわりをどこまでオープンにできるかは、最終的には個人の感覚次第ですね。
私たちが設計した〈HOUSE YK/Islands〉は、長さ40mという敷地に建つ細長い住宅。
ここでは水まわりをすべてアイランド型にして、
ほぼフルオープンの状態で配置しましたし、
(もちろんカーテンなどで必要に応じて閉じることはできますが)
〈柿畑のサンクン・ハウス〉では、70cm掘り下げたフロアに、建具の簡単な開閉で
居住空間とひとつながりになるところにバスルームを置いています。
TOTO製品に、ベーシックなデザインで違和感なくまわりの雰囲気になじむものが
見つかるのは、建築家としてはうれしい限り。
建築が水まわりで表現できることの可能性が、どんどん広がるのではないでしょうか。

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長さ40mという敷地に立つ細長い住宅に水まわりをフルオープンで配置
Photo:Hiroshi Ueda

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70cm掘り下げたフロアに居住空間とひとつながりになるところに置かれたバス
ルームがある(柿畑のサンクン・ハウス) Photo:Sadao Hotta

 

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