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TOTO×マガジンハウス 環境と建築:Vol.11 自然と親しみ、環境を守る  松井亮さんの都心の家づくり。


環境に即し、逆転の発想で家を考える。

「くぼみのある屋上の家」で、ここまで自由な発想の設計できた要因のひとつに、
この家の位置関係にあります。
南側に隣の建物が隣接していて、北側にしか窓が作れないような環境だったんです。
採光を考える時、一般的には南側採光こそ最高と考えがちですが、
実は北側採光の方が安定した光を確保しやすいこともあります。
シチュエーションに対して問題提起をしていき、そこから建築を作っていく。
光をどう住宅に落とし込むかということは、目指すべき建築の重要な考え方のひとつです。
僕が常々考えているのは、「夜が暗くていけないのか?」ということ。
太陽の動きに合わせて、もっと陰影を楽しめたらいいと思う。
その家の置かれた周辺環境と窓の開閉の方向をきちんと計算すれば、
太陽が昇り、日が沈み、室内が暗くなっていくまでの光のグラデーションを
じっくりと楽しめる、自然のリズムに即した生活がかなう。
太陽と一緒に寝起きをする。
それこそ、本当の意味での自然な暮らしだと思うんです。

イメージ

凹み屋根の家。空模様を楽しむ屋上。©Ryo Matsui

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凹み屋根の家。土間と水回りが繋がり、道と繋がる。
©Ryo Matsui

国内産の木材を上手に使う。

環境という観点で建築を考えた時、
僕がもう一つ意識していることが木材の使用についてです。
兼ねてから、国産材、強いては間伐材を住宅で使うための活動を続けているのですが、
国内産の木材はうまく流通に乗っていないのが現状です。
間伐材はそのままでは使えませんので、木を切り、製材し、乾燥させて、
山から持ちだし流通に乗せるという一連の作業があります。
しかし乾燥機1台買うにもコストがかかるので十分な費用がかけられず、
伐採された間伐材がそのまま山に余ってしまっているんです。
いい製材が作れないから売れない。
売れないからコストがかけられない。
コストがかけられないから木材は余る一方。
ゆえに林業が衰退……という悪循環をくり返しています。
この状況を根本から変えるには、日本の木材の需要を安定させる必要があります。
僕の事務所では、まず建築仕様書を環境に即した内容に改革しているところです。
建築仕様書に使用素材の産地/素材を細かく指示することで、
木材の地産地消を促すことができるんです。
地元の木を使うことで輸送エネルギーが削除され、地元の林業も活性化する。
野菜や肉や魚の地産地消に意味があるように、
建築も、その土地にあるものを使うということは
理に適っていると同時に環境を守るための一つの重要なことだと思います。
これには建築家と施主が価値観を共有することが求められますが、
家電や食物に対してのエコや省エネ意識が高まっている時代ですから、
賛同いただける施主の方も増えてきていると思います。
人に優しい、心地いい建築をつくろうと思った時、
木という素材に行き着くのは、ある意味必然だと思います。
木材を美しく、気持ちよく使うためにも、
建築という行為そのものが環境に即していく必要がある。
仕様書の修正は、そのための第一歩ですね。

都会で工夫すべき建築と環境の関わり方を自分の課題にしていく一方、
大自然の真ん中で、自然に寄り添った家づくりをしてみたいという気持ちもあります。
それは、限られた自然を取り込む工夫として、
“外部”を作ってきた都心の家づくりとは対照的な発想が必要になります。
自然の中に人が住まわせてもらうときは、
空気も光も、その場所にある外部が、内部に置き換わるだけ。
外部と内部を極限まで近付けることが、理想の家づくりと言えるかもしれません。

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Photo:Kanako Nakamura

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あずさ監査法人大手町オフィス。木材や漆喰など自然素材のみを使った待合ロビー。写真は応接。 ©Daici Ano

 

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