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水と地球の、あしたのために。

TOTO×マガジンハウス 環境と建築


Vol.3 隈研吾さんの21世紀の建築。住み手と環境に寄り添う。

Text:Sawako Akune Photo:Daici Ano

日本の伝統技で新しい壁面緑化。

周囲の環境に溶け込んでいく建築のあり方を模索し続ける隈研吾さん。
その最新作のひとつが、小田原駅のほど近くに建つ5階建てのビルです。
海を見下ろす坂の途中に建つこの建物の特徴は、なんといってもその外観。
近くにある小田原城の石垣を思い起こさせるような、
ざらざらとした面が建物の前面いっぱいを覆い、緑が茂ります。

「敷地は崖を切り崩した急な斜面。
頑丈な土台をつくって建物をそびえ立たせるようなことはしたくありませんでした。
そこで崖を掘って土台を確保して建物のボリュームを軽くしたうえで、
ファサードを壁面緑化することを考えたのです。
既存の壁面緑化には、僕はずっと作り物のような感じを抱いていたんです。
きれいに揃いすぎていてちょっと居心地が悪いというか……。
本当の自然はもっと乱雑だし、偶発的なものですよね」

“より自然らしい”状態を作り出すため、植物が生える素地として
隈さんが使ったのは鋳造アルミの壁面。

「実は、鋳造アルミって日本の“お家芸”なんですよ。
古くは村野藤吾が〈目黒区役所/旧千代田生命ビル・1966年完成〉で
試したりしていて、世界トップの技術を持っている。
ごつごつ、ざらざらとした岩のような乱雑さは、日本人が好む質感のひとつ。
それを、岩より軽く、メンテナンスも容易な鋳造アルミでつくろうと考えたのです」

イメージ

Photo:Kanako Nakamura

イメージ

ファサードを鋳造アルミで壁面緑化した小田原の建築。
Photo:Daici Ano


“岩”の隙間から生い茂るさまざまな緑。

試行錯誤を繰り返して作り上げたファサードは、
異なる角度や穴のある3パターンのアルミパネルを張り合わせたもの。
この裏側にプランターが組み合わせられており、
パネルの隙間や、穴の中から緑が外へと顔を覗かせています。

「アガパンサス、アスパラガス、ベニシダなど5種類の緑をランダムに植えています。
季節によって、茎がひゅっと伸びて花が咲いたり、力強い緑が生い茂ったりする。
時間によっても表情は変わります。
建物が呼吸をしているような印象になったのではないかと思います」

事務所や専門学校が入るこのビル、5階部分はオーナーの住居になっています。
この住居部分の、中庭を囲むコの字型のプランもまた、
隈さんらしい自然の取り入れ方を現すものです。

「中庭は建物の海の見える側に寄せ、リビング、ダイニング、
バス・トイレ、ベッドルームといった諸室でぐるりと三方を囲みました。
一般的に“中庭”というと四方を囲むものを想像しがちですが、
周囲の環境を遮断したそういう中庭が僕はどうしても苦手なんですね。
不自然で息が詰まる。だからここでも三方型の中庭としました。
この中庭を通じて、光や風といった周囲の自然が家の中に運ばれてきます」

イメージ

中庭の3方をベッドルーム、リビングルーム、水まわりが囲む。Photo:Akinobu Kawabe

第3回は、世界で活躍する
建築家・隈研吾さん。
長きに渡って「負ける建築」を
唱え続けてきました。
それは、周りと調和する、
環境に溶け込む建築のスタイル。
自己主張する建築の時代は終わり、
建築が環境を守る時代が到来しています。

隈研吾(くま けんご)

1954年、神奈川県生まれ。1979年、東京大学院工学部建築学科修了。1987年、空間研究所設立。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。1994年、コロンビア大学大学院建築・都市計画学科講師。1998-99年、慶応義塾大学環境情報学部環境情報学科 特別招聘教授。2001-09年、慶応義塾大学理工学部教授。2007-08年、イリノイ大学客員教授。2008年、フランス・パリにKuma & Associates Europe 設立。2009 年から東京大学大学院教授。

隈研吾さんの作品はこちらから

NEXT : 住宅で環境を考えることの意味。


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