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TOTO×マガジンハウス 環境と建築


Vol.3 隈研吾さんの21世紀の建築。住み手と環境に寄り添う。

Text:Sawako Akune Photo:Kanako Nakamura

力を抜いたアイデンティティレスな建築を目指して。

日本国内はもとより、ヨーロッパやアジアの各地など、
世界中で作品を発表する建築家の隈研吾さん。
木の格子組みが美しい建物、石の貼られた建物、金属のメッシュに覆われた建物……。
その作品群を一見しただけで、そこに共通性を見いだすのは難しいかもしれません。
それは隈さんが“肩の力を抜いて”建築をつくろうと考えているからだと言います。

「20世紀の近代建築が目指してきたのは、
鉄とガラスとコンクリートでできた均質な工業製品のような性格を持つ建築でした。
さらに建築家の側にも、頭でっかちになってしまうような建築理論があった。
でも21世紀の建築が同じことを追いかけていてはいけないと思うんです。
もう少し力を抜いて、周りに心も体も開いて建築をつくっていくべきだ、と。
周囲の環境も、そこを使う人もそれぞれに違うのに、
判で押したようによく似た建築ができあがることは、僕にはとても不自然に思える。
日本の土地には、それぞれの土地に固有の材料や、
土地独自の性質から生まれた伝統文化といったものが存在している。
ほかならぬその場所、場所で何をやるのが自然なことなのかを考えていくと、
自ずから全く違う素材を使った、全く違う建築が生まれてくると思うんです。

イメージ

2010年の作品、梼原・木橋ミュージアム(高知県高岡郡梼原町太郎川) ©2010 Takumi Ota Photography

環境を守るデザイン、それが“負ける建築”。

周囲の環境に溶け込み馴染む建築を、隈さんは「負ける建築」と呼んでいます。
そのあり方が現代の人々に共感を呼ぶからこそ、隈さんの活躍の場は
世界中に広がり続けているのかもしれません。

「建築は常に、時代に寄り添いながら人々が求めるものを探し続けてきました。
工業化社会においては、環境とデザインが対立する局面もあったかもしれません。
でも建築が環境破壊をしていた時代は終わり、
“建築が環境を守る”時代が確実にやってきていると思うんです」

かといって隈さんは、技術の進歩を否定するわけでもありません。
「技術が上がっていくのは無論喜ばしいこと。
建築が建つ場所と使う人とのバランスを見ながら、
何を使い、何を使わないか、正しく選びとることさえできればいいのだし、
それがデザインするということだと思います。
適切なバランスでその判断を下していくために見つけ出したいのは、
その場所ごとにある、ある種の“ユルさ”のようなもの。
それは自分の肌で感じとるしかないものなんです」。

場所ごとに特有の周囲の環境を取り入れ、あるいはそこに同化しながら
つくり上げていく隈さんの「負ける建築」。
建築が周りのあらゆるものを抑えて“勝つ”状態から脱却して、
共存する時代がやってきているようです。

イメージ

2006年の作品、ちょっ蔵広場+宝積寺駅前グリーンシェルター(栃木県塩谷郡高根沢町) Photo:Daici Ano

第3回は、世界で活躍する
建築家・隈研吾さん。
長きに渡って「負ける建築」を
唱え続けてきました。
それは、周りと調和する、
環境に溶け込む建築のスタイル。
自己主張する建築の時代は終わり、
建築が環境を守る時代が到来しています。

隈研吾(くま けんご)

1954年、神奈川県生まれ。1979年、東京大学院工学部建築学科修了。1987年、空間研究所設立。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。1994年、コロンビア大学大学院建築・都市計画学科講師。1998-99年、慶応義塾大学環境情報学部環境情報学科 特別招聘教授。2001-09年、慶応義塾大学理工学部教授。2007-08年、イリノイ大学客員教授。2008年、フランス・パリにKuma & Associates Europe 設立。2009 年から東京大学大学院教授。

隈研吾さんの作品はこちらから

NEXT : 肌で感じたことを建築として表現する


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