岸和郎
「PROJECTed Realities」
'00年8月2日〜9月30日
建築は、現実の敷地・社会・経済・文化といった、さまざまな状況を引き受けながら建つ、とてもリアルなものです。しかし一方で建築には別の側面もあります。それは抽象的なレベルで表現可能な切断面をもち得るものとしての建築という側面であり、自分ではそのことがもたらし得る建築の力にも、建築のもつ現実的な面に感じるものと同様の魅力を感じているのです。
自分自身の建築もいつもその間を揺れ動いています。その距離、建築のもつリアルなものとしての側面と抽象的な次元との距離を表現したいと考えました。
PROJECTed Realities というタイトルはそう思いながらダブル・ミーニングで命名したもので、ひとつには『計画案として表現された(PROJECTed)建築(Realities)』という意味のつもりです。現実に建っている、実現された建築をもう一度計画案としての模型とドローイングのレベルに引き戻すことを考えていました。リアルな次元で実現された建築が再び計画案として表現された時に、それでもなお抽象的なレベルでのメッセージをもち得るのかどうかを明らかにしたいと考えたのです。そのために実現した建築(Realities)も、計画案で終わった建築(PROJECT)もまったく同列に扱うことにしました。そして、それは実はタイトルのもつもうひとつの意味『現実の諸条件(Realities)を可能な限り投企(PROJECTed)』した時に、それでもなお「建築」が立ち現れ得るのか、という自分に課した課題の確認作業でもあるのです。
岸 和郎
撮影:ナカサ・アンド・パートナーズ
講演会 : 岸和郎講演会「近作について」
9月30日 建築会館ホール
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