ギャラリー・間 15周年記念展


 空間から状況へ


'00年10月17日〜'00年12月23日

 1960年代生まれの建築家は、1990年代のバブル崩壊後に頭角をあらわし、それぞれに個性的な設計手法と活動形態を展開している。かつてモダニズムの建築家は、機能的・幾何学的な空間を構築し、社会改革によるユートピアの現出を志した。ポストモダンの建築は、スタイルとイズムを多様化させたが、日本では有効なストックを残すことなく、バブル経済の加速化に巻き込まれた。しかし、いずれの態度も、もはや有効ではないことを若手建築家は感覚的にかぎとっている。
 彼らの態度は、以下のように要約されるだろう。建築を「空間」的な造形に還元し、オブジェクト化するのではなく、建築の外部に注目し、周辺の「状況」との関係を含めて再定義すること。過去を切断する前衛派の混乱でもなく、過去に回帰する保守派の秩序でもなく、差異と戯れる個性派の饗宴でもなく、都市のリアルをつかまえ、デザインに接続すること。本展覧会は、建築家の職能を改めて問いながら、10組の若手が同時多発的に起こす新しい建築のうねりを紹介する。
 少子化と高齢化、移民の増加、情報化、環境問題、経済停滞、市民運動などにより、21世紀の社会は変容せざるをえない。都市は、社会が平坦化したスーパーフラットの彼方に向かう。展覧会は、自由な形式による2組ずつの個別展示と都市の問題を扱う共通展示から構成されるが、後者は、直線的な成長を目的とした近代都市計画とは違う手法を探索する。すなわち、数字がリセットされる、ミレニアムの変わり目に、21世紀を担う若手建築家が、その立場を明らかにすることが本展の目的となろう。
五十嵐太郎

Scene 04 Scene 06 Scene 03 Scene 12
撮影:ナカサ・アンド・パートナーズ

第1期
アトリエ・ワン ペット・アーキテクチャー・プロジェクト
ファクター エヌ アソシエイツ 「ヴォイド」の「リニューアル」
第2期
遠藤秀平 Rooftecture / 分有体
西沢立衛 環境とかたち
第3期
阿部仁史+小野田泰明 10,000
梅林 克 住宅の「問題機制」から
第4期
クライン ダイサム アーキテクツ DELUXE タワー
マツオカ・ワン・アーキテクツ LINE → STAIN
第5期
みかんぐみ 都市のゴルフ
宮本佳明 dis-locations 脱臼都市

空間術講座10:「我々は状況を構築する、21世紀の曙光に向けて」
             健保会館はあといん乃木坂
    監修     阿部仁史×
五十嵐太郎×曽我部昌史×千葉学
    ナビゲーター 五十嵐太郎
    10月28日 アトリエ・ワン×ファクター エヌ アソシエイツ
             「空所−都市をいかに再生させるのか?」
    11月10日 遠藤秀平×西沢立衛
             「境界−内部と外部をいかに関係させるのか?」
    11月25日 阿部仁史+小野田泰明×梅林克
             「集積−建築はいかに社会と接点をもつのか?」
    12月 9日 クライン ダイサム アーキテクツ×マツオカ・ワン・アーキテクツ
             「混交−アイデンティティはいかに生成するのか?」
    12月23日 みかんぐみ×宮本佳明
             「地形−都市をいかに読み込むのか?」
    12月23日 阿部仁史×五十嵐太郎×曽我部昌史×千葉学
             「20世紀最後の建築会議−若手はどこに立っているのか?」

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