ギャラリー・間10周年記念 出展作家の原点作品展
山本理顕

GAZEBO

1986年
作品写真
(藤塚光政撮影)

サイゴンに行ったら、多くの建物の上にこんなヴォールト屋根が乗っていた。間口5〜6メートル、奥行き10メートルほどの敷地に3〜4階建ての住宅が建っている。その屋上テラスを被うシェルターが半透明のヴォールトなのである。みんな住宅である。ヴォールト屋根のシェルターはそれが住宅であることのサインなのである。商業施設群の中でそこだけがいかにも快適そうに見える。私たちにとって、都市の中にどう住むことができるかというのは今でも最重要課題だと思う。未だに有効なモデルが無い。だから、そこに人が住んでいるというサインは、たったそれだけでも、そのモデルに確実に一歩近づいているように見える。だって日本の都市の中ではどれが住宅でどれが商業施設なのかさっぱり分からないじゃないか。「GAZEBO」のヴォールト屋根も、サイゴンの住宅と同じようにそこに人が住んでいるというサインである。9年前、ヴェトナムの住宅なんて全く知らなかったけど 、考えてもみなかったところで、同志に出会えて心強かったなあ。


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